CentOS 7のサポート終了が2024年6月30日に迫っています。CentOS 7サポート終了後のサーバー運用について、頭を抱えている管理者の方も多いのではないでしょうか。
AlmaLinuxはCentOS 7の移行先として注目されているRHELクローンのひとつです。この記事ではAlmaLinuxの概要やCentOSの後継として注目される背景、よく比較されるRockyLinuxとの違いについて解説します。
目次
AlmaLinuxとは【Cent OSの後継 として注目を集めるRHELクローン】
AlmaLinuxとはCloudLinux社主導のコミュニティが開発を進めている、オープンソースのRHELクローンです。CloudLinux社は、CentOSをベースとした「CloudLinux OS」の開発元でもあります。CloudLinux OSは、ホスティング会社などによく採用されている実績のあるOSです。
AlmaLinuxは、提供終了となったCent OSの後継として注目されています。RHELクローンであるAlmaLinuxは、Cent OSやRHELと同様に利用が可能です。
AlmaLinuxが開発された背景 | サポート終了したCentOSの後継として
AlmaLinuxは2021年末にサポートが終了した、Cent OS 8の後継として開発されました。
CentOS 8は非常に安定性が高いオープンソースのRHELクローンであり、多くの企業に使われていた実績があります。しかし2020年末にCentOS Projectは、Cent OS8のサポート期限を従来の2029年末から2021年末に変更すると発表したのです。
Cent OS 8を採用していた多くの企業が、この発表に慌てたのは言うまでもありません。さらにCentOS ProjectがCent OSに代わって開発を進めているCentOS Streamや、無償で使えるほかのRHELクローンは、それら企業のニーズに合いませんでした。
たとえばCentOS Stream はRHELの開発版であり、サポート期間が短いなどの理由で企業にとって使いやすいとは言えません。(Cent OSのサポート期間が10年だったのに対し、CentOS Stream 8のサポート期間は5年)開発版という位置づけから、不具合が発生するリスクなども高くなり、ビジネス利用の本番環境としては不向きです。その他のRHELクローンは圧倒的なシェアを誇るCent OSの影で十分に普及しておらず、サードパーティのサポート状況などが不十分でした。
こうした背景のもとで開発されたのがAlmaLinuxです。CloudLinux社はCentOS Projectの発表を受け、RHELと互換性が高く企業のニーズを満たすOSとしてAlmaLinuxを開発したのです。CloudLinux社はCent OS8開発終了の発表がされて間もない2021年2月1日にはAlmaLinuxのベータ版を、2021年3月20日には最初の安定版をリリースしています。
AlmaLinuxは、2024年6月にサポート終了を控えているCentOS7の移行先としても勿論有力です。CentOS 7からの移行先を探されている企業のサーバー管理者の方は、AlmaLinuxの概要を把握しておくことが推奨されます。
AlmaLinuxの主な特徴
Cent OSの後継として注目されるAlmaLinuxは、どのような特徴があるのでしょうか。以下、AlmaLinuxを使うか検討するにあたって、おさえておくべき特徴をみていきましょう。
Cent OSやRHELと同様に使える
AlmaLinuxは、Cent OSと同じようにRHELのクローンです。そのためCent OSやRHELと全く同じように使えます。またAlmaLinuxは、RHELと1:1のバイナリ互換があることから、Cent OSからスムーズに移行が可能です。
無償で利用が可能
AlmaLinuxは、無償で利用が可能なオープンソースのOSです。そのためCent OSと同様に、サーバーの運用にかかるコストを圧縮するのに役立ちます。
実績豊富なCloudLinuxが開発を主導
AlmaLinuxは実績が豊富なCloudLinux社が開発を主導していることから、安心して利用できる点も注目すべき特徴といえるでしょう。
CloudLinux社は、RHELなどをベースとしたCloudLinux OSの開発元としても知られています。CloudLinux OSは高負荷に強い上に安定性が高く、多くのホスティング事業者に採用された実績のあるOSです。
実績が豊富なCloudLinux社による主導のもと、たった4ヵ月間でAlmaLinux正式版をリリースできたことも特筆すべき実績といえるでしょう。
リリース速度が早い
AlmaLinuxは、リリース速度が非常に早いです。AlmaLinuxは、アップストリームのRHELに追従してリリースを行います。通常、RHELがリリースされてからAlmaLinuxのリリースが行われるまでの期間は1~2日ほどです。さらに更新は24時間以内に行われます。
たとえば2022年11月にRHEL9.1がリリースされてから、AlmaLinuxはわずか1日後にリリースが行われました。同じRHELクローンのライバルとして名前が上がることの多いRocky Linuxが11日かかったのと比べ、その差は歴然です。
少なくとも2029年までのフルサポートが約束されている
CloudLinux社は、AlmaLinux8のフルサポートを少なくとも2029年まで続けるとしています。さらにプラチナスポンサーであるサイバートラスト社の有償サポートを使えば、最大16年間の長期サポートを受けることが可能です。
こういった点も同じOSを長期的・安定的に利用されることが求められるビジネス向けOSとして、AlmaLinuxが支持されている理由と言えます。なおRHEL9リリースに伴って2022年5月にリリースされたAlmaLinux9のサポート期間は、10年(2032年5月まで)とこちらも長いです。
AlmaLinuxとよく比較されるRockyLinuxとは?
Rocky Linuxは、Cent OSプロジェクト創設者の1人であるGregory Kurtzer氏が中心となって開発したRHELクローンです。Rocky Linuxは「バグも含め100%の互換性を持つように設計している」と公式に表明するほど、RHELと高い互換性があります。
AlmaLinuxと同様にRockyLinuxもまた、Cent OSの突然の方針転換を受けて、CentOSユーザーの受け皿となるべく開発されたOSです。いずれもCent OSと互換性があり、多くのユーザーが移行先として選んでいます。リリースされた時期についても、両者はほぼ同じです。
こういった事情により、RockyLinux はAlmaLinuxと比較されることが少なくありません。本項では、RockyLinux とAlmaLinuxの主な違いについてみていきましょう。
AlmaLinuxとRockyLinuxの主な違い
AlmaLinuxとRockyLinuxの違いはどこにあるのでしょうか。以下、両者の比較表をみてみましょう。
AlmaLinux | RockyLinux | |
---|---|---|
開発元 | CloudLinux | Rocky Enterprise Software Foundation |
リリース日 | 2021/3/30 | 2021/4/30 |
RHELからの リリース遅延 | 9.0:9日 9.1:1日 9.2:0日 | 9.0:58日 9.1:11日 9.2:6日 |
最新バージョン (2023/11時点) | 8系:8.8 9系:9.2 | 8系:8.8 9系:9.2 |
RHELとの互換性 | 完全互換 | 完全互換 |
費用 | 無料 | 無料 |
ライセンス | GPLv2 | BSD |
サポート期限 | 8系:2029年まで 9系:2032年まで | 8系:2029年まで 9系:2032年まで |
Cent OSからの 移行ツール | あり | あり |
この比較表を見る限り、両者に大きな違いはありません。リリース速度やライセンスなどに違いはあるものの、ほとんどのユーザーにとって「どちらを使うか」選ぶための決め手にならないでしょう。Cent OSからの移行先としてみると、AlmaLinuxとRockyLinuxはどちらも同じくらい優秀と言えます。
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2023年6月に発表されたRHELソースコード一般公開の取りやめについて
2023年6月にRHELの開発元であるRed Hat社は、今後CentOS StreamをRHELに関する唯一のパブリックなソースコードのリポジトリにすると発表しました。簡単に言うと、RHELのソースコードについて一般公開を取りやめるということです。
有料のサブスクリプション契約をしているユーザーはRHELのソースコードにアクセスできます。しかし、そのソースコードからクローンOSを作ることは、契約上禁止されているのです。
この件に関するAlmaLinuxとRockyLinuxの対応は、以下の通り異なっています。
■AlmaLinux
今後RHELとの1:1互換性(完全互換)を目指すことをやめ、バイナリレベルでの互換を目指す。(RHEL上で動作するアプリケーションは、今後もAlmaLinux上でも動作する)
■RockyLinux
合法的な方法によりソースコードの入手を続け、RHELとの完全互換を継続する
Red Hat社の方針によって、2023年11月現在、AlmaLinuxとRockyLinuxのユーザーに影響は出ていません。ただし、今後のRed Hat社の方針や各社の対応によっては、何がしかの影響が生じる可能性はあり注意が必要です。
CentOS 7からAlmaLinuxへ移行する方法
CentOS 7からAlmaLinuxへ移行するためのツール「Elevate」が、以下URLにて公開されています。
公式:https://almalinux.org/ja/elevate/
リンク先にもある動画の手順に従い作業をすすめることで、CentOS 7からAlmaLinuxへ簡単に移行することが可能です。
なお本ツールを使って移行するにあたって、以下の点には注意ください。
- 移行先サーバーが、インターネットにアクセスできる状態であること
- Cent OSが最新のバージョンになっていること
- ツールを使う前に、必ずバックアップを取得しておくこと
- CentOS 8で廃止されたカーネルモジュールを読み込まないようにする
- 移行時にダウンロードされるパッケージファイルを取得するため、ディスク容量に数GB程度の空きがあること
まとめ
AlmaLinuxはCentOSと同様に使えるオープンソースのRHELクローンです。AlmaLinuxはサポート終了が迫っているCentOS 7からの移行先として、よく比較されるRockyLinuxと共に最も有力な選択肢のひとつとなっています。
AlmaLinuxとRockyLinuxはいずれも品質の高いオープンソースのRHELクローンであり、どちらを選んでも大きな差はありません。両者とも、RHELと同様の利用が可能です。
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