ビジネスチャットは社内や社外とのやり取りを行う上で様々なメリットを受けることができるツールです。
しかし、そんなビジネスチャットであっても導入することで反対にデメリットが大きくなってしまい、失敗に終わってしまうという事例が存在します。
では、なぜメリットのあるビジネスチャット導入で失敗してしまうのか、このページではその原因と対策についてご紹介します。
目次
ビジネスチャットの失敗例
それでは、実際にビジネスチャット導入に失敗してしまった原因と対策についてご紹介します。
無駄なコンタクトが増える
ビジネスチャット導入の失敗として1つ目にあげることができる要因は無駄なコンタクトが増えてしまい、かえって作業効率が低下してしまうというものです。
無駄なコンタクトが増える原因
ビジネスチャットにはメールよりも気軽にメッセージのやり取りが可能で、タイムラグが少なくほぼリアルタイムなやり取りが可能になるというメリットがあります。
しかし、その気軽さゆえにメッセージが短文で複数送信だったり、メッセージ内容が雑になり何度も追加で質問が必要になったりと手間が増えることがあります。
また、チャネルなどではなく個別チャットにて業務時間に社員同士で雑談を行ってしまうといったケースもあります。
無駄なコンタクトが増えてしまう時の対策
この問題は基本的に社外ユーザーを招待しているチャネルでは基本的に発生しにくい問題ですので、社内ユーザーのみが参加しているチャネルで多く見られる問題です。
そのため対策としては、あくまでも業務に使用するツールであることから私語や業務以外の連絡に使用しないといったルールを設け、社内に周知しておくことが重要となります。
ただし、現場の雰囲気は企業毎に異なりますので、ルールでガチガチに固めてしまうとかえって社員同士のコミュニケーションが減ってしまうリスクにも繋がるため、どこまでルールを厳格化するかは社風に合わせて調整する必要があります。
使いこなせない
ビジネスチャットの導入を検討されている企業の中には、実際にチャットツールを利用することになるユーザーがこういったツールの使用になれておらず、最大限に活用できないという事例もあります。
有効活用できない原因
ビジネスチャットはチャット機能は当然ながら、他にも様々な機能が搭載されています。
その中も最も基本となるチャット機能を使えないという方は見かけたことはありませんが、ファイルの共有方法だったり個人チャットとチャネルなどのグループチャットとの違いを把握できておらず、全体チャットに個別の内容を送信するケースなども見られます。
ここに関しては、単純にビジネスチャットの様なツールに使い慣れていなかったり、もともとツールを使用しない業務に従事されていることが原因となっています。
ツールを使いこなせない時の対策
こういった問題が発生する、もしくはその可能性が考えられる場合は、対策としては導入前後にマニュアル等を利用して利用方法をレクチャーするという方法が推奨されます。
その際、利用ユーザーのツールなどの理解度に合わせて利用方法だけではなくどういった場合に個人チャットを、反対にグループチャットを利用する場合などについても教育する必要があります。
また、利用してもらう予定のユーザーがどこまで使いこなせるか不明な場合は、無料のお試し期間を設けているビジネスチャットを申請して、実際に社員に使ってもらうべきでしょう。
土日祝にも連絡がくる
ビジネスチャットを導入することで、平日の営業時間内だけではなく土日や祝日といった休日にも仕事に関するメッセージを受信してしまい、社員がプライベートの時間を奪われてしまうという問題が発生することがあります。
プライベートな時間も奪われてしまう原因
多くのビジネスチャットはPC上だけではなくスマホなどからもアプリとしてインストールすることでアカウントを連携させることが可能です。
そのため、社内利用だけであってもカレンダー通りの出勤日の部署とシフト制などで土日も出勤する部署がある場合にどちらかが休日の日でもスマホに仕事のチャットが届いてしまう状況になります。
また、社外ユーザーを招待している場合は、土日祝のような休日でも社外ユーザーから連絡が来ることがありますし、緊急の場合は休日でも対応が必要になる場合もあります。
休日に連絡が来てしまう場合の対策
この問題に関しては、企業によって必要な対応が異なりますので、共通の解決策はありません。
休日に業務にあたることを良しとしない場合は、休日は社用スマホの電源を切るなどの対策が必要になりますが、社員間で差が生じないようにするために明確にルールとして定める必要がある場合もあります。
反対に、取引先など至急対応しなければ大きな損失が発生する状況に対しては、むしろスマホ通知があることで異変に気が付けるというメリットにもなります。
なので、環境や利用ユーザーとの関係性など、利用ユーザーに合わせて柔軟に対策を講じる必要があります。
招待ユーザーが他のチャネルにアクセスする
ビジネスチャットを社内だけで利用している場合は問題になることは少ないですが、社外のユーザーも招待して利用している状況で設定を間違えてしまい、社外秘の情報を取扱うチャネルにも社外ユーザーが自由に出入りできてしまうという問題が発生してしまうこともあります。
社外ユーザーが他のチャネルを閲覧してしまう原因
この問題は、本来は社外ユーザーを特定のチャネルにだけ参加できるチャネルに招待するところを、全てのチャネルにアクセスできる社内ユーザーと同じ権限を付与してアカウント作成、招待してしまうことで起こります。
※ビジネスチャットはそれぞれのサービス毎に若干の仕様の違いがあるため、全てのビジネスチャットに当てはまるものではありません。
これはひとえに、ビジネスチャットの使用方法を正しく理解できていないことが原因としてあげられます。
招待ユーザーに関する対策
そのため対策としては、
- 社外ユーザーの招待を行う社員に関しては、基本機能の利用方法だけではなく情シス観点における知識の習得を行わせる
- 社外ユーザーの招待に関しては社内でもチャットツールを熟知している特定の人しか実行できない
という上記の2つのいずれかのルールを設けるといった方法が有効になります。
勝手に名称や参加メンバーなどを編集される
頻度は多くありませんが、いつの間にか作成したチャネルが無くなっていたり、名称が変更されていたりする場合があります。
もともとチャネル数が少なくそういった変化に即座に気付ける環境であれば大事に発展することはありませんが、そうではない状況でこういった変化に気付けない場合は、業務に多大な悪影響が出てしまう場合もあります。
勝手に編集されてしまう原因
この問題は非常にシンプルで、該当するチャネルに参加しているメンバーの誰かに管理者レベルの権限が付与されていて、操作ミスや判断ミスによりチャネルへの変更が加えられているケースが多いです。
特に、ツールを使い慣れていないユーザーに管理者権限がある場合は、分からないなりにツールに慣れようと触っているうちに名称が変えてしまっていたり、チャネルを誤って削除してしまうことも考えられます。
権限に関する対策
この問題の対策は非常に簡単で、社内の管理職レベルにだけ管理者権限を付与し、それ以外の社員には「一般」、社外ユーザーには「ゲスト」などチャネル名の変更や削除などの権限がないアカウントに設定することで解決できます。
もちろん、管理者権限を持っているユーザーはそういったツールに関する知識を獲得する必要はあります。
過去のやり取りが見れなくなる
ビジネスチャットの中には、やり取りを行った数か月後にその履歴が完全に削除されてしまう仕様になっているものがあります。これにより、特定のチャネルに新しく参加したユーザーが過去にどういったやり取りがあったのかを確認できなかったり、社外ユーザーとのやり取りでメッセージのみで取り決めた内容が確認できず、トラブルに発展するといったケースがあります。
履歴が見れなくなる原因
ビジネスチャットの中でも、特に無料版のビジネスチャットによく見られる仕様として、この過去履歴の保持期間が設定されています。
もちろんこの設定はユーザー側で変更することができませんので、過去のやり取りは一定期間が経過するごとに自動的に削除されていってしまいます。
過去履歴の保持対策
上記でもご紹介の通り、この仕様はユーザー側では触ることができません。
よって、過去の履歴を保持したい場合にとれる対策としては、
- 無料版から有料版へアップグレードを行う
- 初めから過去履歴の保持機能が搭載されているビジネスチャットを選ぶ
- 既に利用中の場合は保持機能ありのチャットツールに乗り換える
上記3点のいずれかを選択する必要があります。
数年後に費用感が合わなくなる
ビジネスチャット導入時には月額の費用感は予算と合っていると判断したが、導入から数年後にはビジネスチャットの月額が膨れ上がってしまいとてもツールに割ける費用感ではなくなってしまっているケースがあります。
費用感が合わなくなる原因
ビジネスチャットの多くは、月額や年額は利用ユーザー数に対する課金制となっているため、利用ユーザー数が多ければ多いほど費用も高くなります。
そのため、導入時には利用者は最小限で済んでいたが、チャットツールの活用の幅を広げていき社内だけではなく社外ユーザーも招待しだしたことにより一気に費用が何倍にも膨れ上がってしまいます。
費用対策
この問題の対策としては、ビジネスチャットの導入前に最大でどれ位の利用ユーザー数になるかを予測し、導入時の費用だけではなく利用ユーザー数が増えた場合の費用も計算しておく必要があります。
もし、今後どれだけのユーザー数になるか予測できないという場合には、ユーザー数に関係なく定額制で利用できるビジネスチャットの導入を検討することで費用を固定費にすることも可能となります。
情報漏洩が起こる
ビジネスチャットを導入しただけで起こるわけではありませんが、ビジネスチャット経由で情報漏洩が起こってしまうリスクがあります。
基本的に対策や管理を行っていれば特に問題はありませんが、そこを怠ることでリスクが高まります。
情報漏洩が起こる原因
ビジネスチャットからの情報漏洩としては様々な経路があり、スマホからも利用できる状態でそのスマホを画面ロックなどをかけずにどこかに置き忘れてしまい、そこから他人に見られてしまうケース。
アカウントやパスワードを社員名など推測されやすいものにしたことで、ブルートフォースアタック(総当たり攻撃)により不正アクセスを許してしまうケースなど様々です。
もちろん、これらはビジネスチャットに限った話ではありませんが、スマホ利用されている場合には特に注意を払う必要があります。
情報漏洩への対策
ビジネスチャットからの情報漏洩リスクの対策としては、チャットツール選びと運用方法の2つの観点から行う必要があります。
まず、チャット選びに関しては2要素認証やアクセス制限といったセキュリティ機能が充実したチャットツールを選び、適切に設定を行うことで回避できます。
次に運用方法に関しては、ID・パスワードを推測しにくいものにすること、そしてスマホや社用PCなど機密事項が詰まったデバイスを所持している場合は、無闇に移動しないなど社内ルールを定めて周知するという対策が必要になります。
ビジネスチャットの導入成功に必要なこと
上記のビジネスチャットの導入失敗例を踏まえ、導入を成功させるために何が必要なのかも事前に考える必要があります。
そこで、ここからはビジネスチャット導入の成功のために必要なポイントをご紹介します。
用途・目的を明確にする
まずは、ビジネスチャットの導入を検討することになった理由を改めて明確にする必要があります。
どういった用途に使用したいのか、ビジネスチャットを用いて何を得たいのかといった目的を明確にすることで、自社に適したビジネスチャットを選びやすくなります。
ここを疎かにしてしまうと、ビジネスチャットの導入を行えたとしても単に連絡手段が変わっただけで、特にメリットもないという状況になってしまう可能性が出てしまいます。
最悪の場合は、逆にデメリットとなるポイントが目立ってしまい、結果として元の連絡手段に戻すという導入失敗にも繋がってしまうため、再度ビジネスチャットの用途・目的を明確にする必要があります。
ツールの選定を行う
ビジネスチャットの導入検討に至った用途や目的が明確になれば、次に重要なポイントはそれに適したチャットツールの選定を行うことです。
折角の目的があるにも関わらず、その条件を満たすことができないチャットツールを選んでしまうと、導入自体が無駄になってしまうため、ここは慎重に選定する必要があります。
スマホ対応、セキュリティ機能、社外ユーザーの招待可否、過去履歴の保持機能、費用感など事前に条件をピックアップできていれば、それらを照らし合わせながら比較検討を行いましょう。
事前にお試しで触ってみる
基本的には上記でご紹介の2つのポイントを実行することで、ビジネスチャット導入で失敗するリスクは大幅に減らすことができます。
しかし、条件が合っていたとしても実際の使用感が思っていたものと違うというケースも良くありますので、事前に無料のお試しサービスがあれば積極的に申請し、複数の社員に実際に使ってもらうことがおすすめです。
これにより、想定していなかった問題点が判明したり、反対に社内から良い評価が多ければチャットツール選定の参考にもなります。
ルールを決める
導入するチャットツールを選定することができれば、次に社内で使用していく上で順守すべきルールを作成・周知する必要があります。
もちろん、社内の出勤や会議の場所、その他に利用する時も本当に簡単な連絡事項のみの情報共有程度に留める場合はそこまで徹底する必要はありません。
しかし、ビジネスチャット上で機密性の高い情報を扱う場合であったり、社外のユーザーを招待する機会がある場合は、万が一のことも考えてしっかりとルールを作成し、周知徹底を行うことが望ましいです。
適宜追加ルールを決める
いくらお試しなどでビジネスチャットを触っていたとしても、実際にビジネスチャットを導入して業務で活用していれば新しく疑問が湧いてきたり、人によって使い方に差が生じてしまうことは往々にしてあります。
そんな時は、一旦は個別対応が必要になったとしても、その後に同じ状況になる社員が出てくる可能性は高いので、その都度ビジネスチャットの運用ルールを追加することが推奨されます。
問題が発生する度に個別対応を行っていては作業効率が落ちてしまうので、既にマニュアルを作成している場合は追記などの手間は発生しますが追加ルールとして作り直しを行う、もしくは再度追加ルールとして周知する必要があります。
まとめ
ビジネスチャットは非常に有用なビジネスツールではありますが、使い方や選び方を間違えてしまうと思わぬデメリットや会社の信用に関わる大きなミスに繋がるリスクもあります。
こう聞くと危ないツールのように聞こえるかも知れませんが、実際はしっかりと手順を守ってチャットツールの選定から運用を行うことでこれらのリスクを無くすことができ、業務の効率を向上させることができるツールであることは確かです。
そのため、これからビジネスチャットの導入を検討されている方がいましたら、この記事が少しでもお役に立てばと思います。