ビジネスで利用できるチャットサービスの中には無料で利用できるチャットサービスもあります。
もちろん無料ですので、有料版と比較すると劣る部分もありますが、それでもチャットサービスに求める機能など条件次第では無料のビジネスチャットでも十分なケースもあります。
そこで今回は、無料のビジネスチャットの中でも特にオススメできるチャットサービスや注意点などについてご紹介します。
目次
無料と有料のビジネスチャットの違い
冒頭でも触れている通り、ビジネスチャットは無料のサービスと有料のサービスの両方が存在します。
多くの場合は同じチャットサービスであっても、その中で無料プランと有料プランが存在しており、どちらで利用するかを選択できる様になっています。
この無料と有料の違いは機能面での違いがほとんどではありますが、具体的な違いはチャットサービスによって異なります。
その中でも多くのチャットサービスでは以下の様な特徴が見られます。
無料版 | 有料版 | |
---|---|---|
ユーザー数 | 制限あり | 制限なし※ |
容量 | 少ない | 大容量 |
過去の履歴 | 順次削除される | 残り続ける |
各種機能 | 制限あり | 制限なし |
※ユーザー数に関しては有料版のビジネスチャットを利用することで上限を大幅に無くすことも可能になりますが、注意点としては多くのビジネスチャットがユーザー数課金となりますので月額も比例して高くなります。
各種機能面の制限に関してはサービスによって様々で、一斉送信機能だったりアプリ連携機能などが該当します。
セキュリティ面の機能にも違いがあり、2要素認証など簡単なものであれば無料版でも利用できることが多いですが、それ以上のWAFだったりアクセス制限など高度なセキュリティ機能に関しては、無料版では利用できないことがほとんどです。
チャットサービスの中には個人で利用するユーザーも多いLINEの様なサービスがあります。これ自体は非常に便利ですが、この個人アカウントを使用して業務に取り組まなければいけないというBYOD問題が発生しています。
これは企業や現場でビジネスチャット等のツールに費用をかけられないことも原因の1つとして挙げられますので、無料で利用できるビジネスチャットは有料版と比べてBYOD問題の対策としても非常に有効な手段となります。
無料で利用できるビジネスチャット
それでは、ここからは無料で利用できるビジネスチャットの中でもおすすめできるチャットサービスに厳選してご紹介いたします。
Slack
1つ目はSlackという世界中で利用されているチャットサービスです。
このSlackの特徴としては、日本製ではなくアメリカ製であり150か国以上で利用されているというとにかく知名度の高いチャットサービスです。そのため、Slackに関する情報はインターネット上に溢れていますので、情報収集に困ることはありません。
このSlackの無料版では、基本のチャット機能はもちろんのことビデオ会議だったり他のツールと連携させたりと利便性も高いチャットサービスとなっています。
Slack有料版と比較すると過去履歴が90日分までしか残らないこと、ビデオ会議は1対1のみ、社外ユーザーの招待も個別チャットのみとなっています。
他にもセキュリティやデータ保護の観点でも無料版では不安の残るサービス内容となっています。
チャットワーク
2つ目はチャットワークという日本発のチャットサービスで、無料版だけではなく有料版も存在しています。
このチャットワーク無料版の特徴としては、グループチャットの数が無制限となっており複数のグループの作成が必要な現場でも量産することができます。
また、タスク管理の機能も有しており、チャット内でプロジェクトのタスクの進捗管理が可能であり、単なる連絡手段以上の使い方が可能なサービスとなっています。
他にもビデオ通話や音声通通話も可能で、データ容量も5Gと映像などの大容量データでもない限りはそうそう容量不足になることもありません。
やはり無料版では過去履歴が5000件もしくは40日間までといった制限があり、ビデオ通話・音声通話も1対1のみ。
アカウント数も社内外あわせて上限1000人までとなっており、アクセス制限やシングルサインオンなど高度な機能は有料版のみ利用できる仕様となっています。
Workplace
3つ目にご紹介するビジネスチャットはWorkplaceというチャットサービスです。
WorkplaceはMeta(facebook)が提供しているサービスで、厳密に言えば無料版というものが存在しません。このチャットサービスで選択できるプランは全て有料プランのみで構成されています。
しかし、Workplaceには30日間の無料トライアルが存在しているため、長期的に利用検討されている職場では対象外となりますが短期的にグループチャットやWeb会議などを利用したいが必要な期間が過ぎればそれ以降は不要だという場合に有効です。
他のビジネスチャットとは異なり30日間という利用日数の縛りはありますが、利用できる機能はチャット、ビデオ、グループ、イントラネットなどWorkplaceのアドバンスプランで利用できる機能そのままであるため、無料でありながら有料級の機能を利用することができます。
また、Workplaceは月額制で契約年数の縛りなどもありませんので、30日間だけではなく2ヶ月間といった期間だけ必要な場合も1か月分だけの料金を支払って利用するという使い方も可能です。
LINE WORKS
4つ目にご紹介する無料で利用できるビジネスチャットは、LINE WORKSというサービスです。
このLINE WORKSはその名の通りLINEと同じくLINE株式会社が提供しているチャットサービスです。
実はこのLINE WORKSは以前は有料プランしか提供していませんでしたが、2018年に新しく無料プランが発表されたため以前よりも気軽に導入しやすくなりました。
もちろん無料版ですので有料版と比較すると機能面で制限がありますが、それでもトークや音声・ビデオ通話(画面共有可能)、タスクや掲示板機能にアドレス帳といった基本的場部分は利用でき、管理機能やセキュリティ機能、監視ログも無料版で利用することが可能です。
有料版に劣る部分としてはユーザー数上限100名が無制限に、共用ストレージ5Gが100G以上から、グループ通話は4名までが200名までになり通話時間60分の制限もなくなります。
他にも無料版ではサポート窓口は利用できず、アプリ内に広告も表示されるため利便性は多少下がってしまいます。
Teams
5つ目に紹介する無料で利用できるビジネスチャットはTeamsです。
このTeamsはMicrosoftが提供していることもあって、日本だけではなく多くの国で利用されているチャットサービスです。
もともとTeamsには無料版のTeamsクラシックというプランがありましたが、こちらは2023年にサービスを終了し、代わりに新しいMicrosoft Teamsの無料プランを利用できるようになりました。
Teamsの無料版終了で何が変わる?違いや対応すべきポイントを解説
多くの企業で利用されているチャットやグループ会議機能などを持つツール「Teams」ですが、このTeamsの無料版が2023年の4月に終了することが決定しています。 これにより、これまでTeams無料版を利用してきたユーザーは代替ツールへの乗り換えなどの対応が必要になりますが、条件などによってとれる対応策が変わってきます。 そこで今回はTeams無料版の終了で必要な対応や、Teamsを継続利用する場…
新しい無料版のTeamsの特徴としては、チャットや60分制限のあるビデオ会議、ファイルの共有・共同編集、容量最大10GB(1人2GB)となっており、簡単な用途であれば十分な機能となっています。
Teamsを有料版にすると、ビデオ会議の時間が無制限になり参加者も最大300名まで可能となります。
更に会議の録音・録画機能が利用でき、容量も上限1TBまで上がります。
サポート窓口も有料プランのみ利用できるサービスですので、この辺りは明確に差別化されています。
ビジネスチャット無料版の注意点
無料で利用できるビジネスチャットと言えど、ご紹介の通り基本的な機能は利用できるサービスとなっています。
そのため、魅力に感じられる部分も多々あるかと思いますが、実際に導入するとなるとやはり注意すべきポイントはいくつかあります。
機能が足りない
無料で利用できるビジネスチャットは有料版と比べて利用できる機能が絞られていることがほとんどです。
そのため、本来チャットを使って業務を行う上でで必要な機能が足りず、反対に手間が増えてしまったり様々なリスクがある状態で業務にあたることになるケースがあります。
具体的な例でいえば、テレビ会議の際に後から見返す必要がある会議だったり、契約内容のすり合わせなど証拠を残しておきたい場合には録画機能が非常に重要になります。しかし、無料版でこの機能が使えることはありませんので、誰かひとり記録係を配置しなければいけなかったり、後から言った言ってないの水掛け論に発展してしまうなどのトラブルの可能性を高めてしまいます。
そのため、「無料であること」は確かに魅力的ですが、本来必要な機能を捨ててまで無料版を選択して本末転倒にならないように注意する必要があります。
セキュリティが万全ではない
前述でもご紹介の通り、ビジネスチャットの無料版でも2要素認証など簡単なセキュリティ機能は利用できる事がほとんどですが、アクセス制限やWAFなど高度なセキュリティ機能は利用できません。
そのため、特に機密性の高い情報を個別チャットやグループでやり取りする、社外秘や個人情報のデータファイルをビジネスチャット上で受け渡しする場合は、万が一のことも考え万全なセキュリティ対策が可能な有料版を検討する必要があります。
もちろん、出退勤や会議時間の確認など簡単な報連相だけを行う用途でビジネスチャットを検討されている場合はそこまで強固なセキュリティ機能は不要ですが、そうではない場合はしっかりとセキュアな環境を整える必要があります。
制限がある
ビジネスチャットでは有料版では無制限に利用できる機能であっても、無料版では制限が設けられている場合があります。
具体例で言えば、ビデオ通話などの機能はあるが無料版では1対1での通話にしか対応していなかったり、通話時間も無制限ではなく60分までといった制限などがあります。
他にも、作成できるアカウント数などにも制限がかかっていることが多いので、大規模な企業だったりプロジェクト管理などにもビジネスチャットを用いたい場合には無料版では十分に活用できない可能性が考えられます。
過去の履歴が残らない
無料版のビジネスチャットの中でも、特にデメリットに感じられることが多いポイントとして過去履歴が残らない点が挙げられます。
ビジネスチャットにおいて過去履歴が残っていれば、グループに新しいメンバーが入ってきた時に過去のやり取りを簡単に確認できる、社外とのやり取りで過去にどういった取り決めが行われたかの証拠になる、過去にチャットで共有した資料を簡単に見つけることができるなど、非常に多くのメリットが得られます。
しかし、無料版のビジネスチャットのように過去の履歴が日数経過により自動削除されてしまうと、これらのメリットが無くなってしまうどころか、反対にチャット上でやり取りしたことにより履歴も証拠も全て消失してしまいトラブルの原因になることもあります。
そのため、ビジネスチャット上だけでしかやり取りしない内容に関しては、無くなっても問題がないやり取りに限定するか、重要な内容やデータに関しては別で保管する必要があります。
ストレージ容量の制限がある
無料で利用できるビジネスチャットを検討されている場合、ストレージ容量の制限が低めに設定されている点にも注意する必要があります。
もちろん、チャット上でテキストのみでしかやり取りを行わない場合はそこまで気にする必要はありませんが、ファイルなどデータの共有を頻繁に行われる場合は予想以上に速いペースで上限に達してしまう可能性があります。
ストレージ容量が上限に達してしまうと、チャットサービスによっては通常の投稿も一切できなくなりますので、その都度アカウント管理者が過去の投稿やファイルデータなどを削除しなければいけなくなります。
無料のビジネスチャットをおすすめできる条件
ビジネスチャットは利用用途によっては無料版では十分な効果が見込めない可能性がありますが、反対に無料版で利用できる機能だけでも十分に活用できる用途も存在します。
そこで、無料のビジネスチャットでも利用をおすすめできる用途には、どのような条件があるのかを見ていきましょう。
社内だけで利用する
ビジネスチャットを社内だけで利用する場合は、無料版でもそこまで困ることはありません。
会議なども同じ社内であればそのまま顔を合わせて行うことも可能ですし、ストレージ容量が不足してしまった場合も一時的に別の手段で連絡を取りあうことも可能です。
ただし、社内だけで利用する場合でも、リモートワークだったり外回りの頻度が高い社員が利用する場合には、無料版で利用できるビジネスチャットの機能だけでは不十分な可能性もあります。
少人数だけで利用する
ビジネスチャットを社内のほんの数人だけで利用する場合も、無料版の機能だけで十分な可能性があります。
少人数であれば、何かしら機能面などで制限がかかったとしても、何かしら他のツールで代用することができ、影響範囲も全社的なものではなく該当する数人のみの対応で済ますことができます。
もちろん、数人であっても制限などで代替ツールなどを使用する頻度が高くなる場合は無料版もしくはビジネスチャット自体が合っていない可能性も考えられますので、再度ツール選定や有料版へのアップグレードを検討するべきかも知れません。
ファイル共有を行わない
ご紹介の通り、無料で利用できるビジネスチャットはストレージ容量が少なめに設定されていますので、頻繁にファイル共有を行う場合には不向きです。
しかし、用途として基本的にファイル共有を行わないという場合には、ストレージ容量がネックになることはほとんどありません。もちろん、単なるテキストだけのメッセージだけでもストレージ容量を消費しますが、過去履歴は一定の期間を過ぎると自動消去されてしまうビジネスチャットを選択すれば容量問題も自動的に解決します。
重要な情報を取扱わない
ビジネスチャットを使用して重要な情報やデータを取扱わないことも、無料版をおすすめするための条件になります。
無料版でできるセキュリティ対策には2要素認証までが限界になっていることが多いので、ここを突破もしくは迂回する方法で不正アクセスを試みられると防げない可能性が出てきます。
そのため、会社の信用や大きな損害に繋がるような情報、データを取扱う予定がある場合はアクセス制限やWAFなどによるセキュリティ対策が可能な有料のビジネスチャットが推奨されます。
よって、無料版を検討する場合はあくまでビジネスチャット上では機密性の高い情報を扱うことがない用途である必要があります。
まとめ
無料で利用できるビジネスチャットの中には、そこで使える機能だけでも十分に業務に活かすことができるチャットサービスもあります。
また無料のチャットサービスも非常に多く存在していますので、手軽に導入しやすい環境にあると言えるでしょう。
もちろん、無料版でどのような用途にも対応できるわけではありません。セキュリティ面やストレージ容量、テレビ会議など無料版では制限があるサービスがほとんどですので、用途によっては適さないケースもあります。
こういったビジネスツールの導入では費用感が重要であることは当然ですが、そこだけに意識を集中させすぎると失敗にも繋がりかねませんので、用途と使える機能にも着目し、最適なビジネスチャットを選択する必要があります。