CentOSは企業サーバーでの採用率が高いLinux系のOSです。無償で使える上に安定性が非常に高いことからサーバーOSとして適しており、多くの企業から支持されています。
しかしながら、2020年には開発方針の大幅な変更が公式から発表され、利用企業が混乱する事態となりました。この記事では、CentOSの特徴や概要といった基本から方針転換の概要についてわかりやすく解説します。その上で、CentOSを継続して利用するか判断する際のポイントも紹介するので、CentOSについて知りたい方は参考にしてください。
目次
CentOS の特徴と人気が高い理由
数あるLinuxディストリビューションの中でも、CentOSはUbuntuと並んで最もメジャーなOSの1つです。それではCentOSが多くの企業ユーザーから支持されるのは、どんな理由からでしょうか。ここでは、CentOSのどのような特徴が人気の理由となっているか解説します。
※
ここであげるメリットは、CentOS 7までに該当します。CentOS8以降については事情が異なることから注意が必要です。詳細は次の段落で解説しています。
RHELと高い互換性を持ちながら無償で使える
RHEL(Red Hat Enterprise Linux)は、最もよく知られるLinuxの有償ディストリビューションです。その高い信頼性から公的機関にも利用されている上に、幅広いプラットフォームに対応しています。ただし保守サポートにかかる費用が高額である点が、利用企業にとってはネックでした。
一方のCentOSは、RHELと完全互換を目指す無償のLinuxディストリビューションです。RHELとほぼ同等の機能や安定性を誇り、多くの企業から利用されています。つまりCentOSはRHELと非常に互換性が高い上に、RHELと異なり無償で使えるわけです。
有償OS並みの長期サポートと機能を備える
CentOSは、その機能性の高さも特徴的です。RHELに対し行われる改修は随時CentOSにも反映され、有償・商用向けとして通用する高品質な機能がCentOSにも追加されます。つまりCentOSは無償であるにも関わらず、有料OSに引けを取らない機能性を備えているわけです。
またCentOSのメリットとして、サポート期間が突出して長い点もあげられます。CentOSはサポート期間についてもRHELと同等です。たとえばCentOS 7に関しては、2014年6月のリリースから2024年6月までRHELと同じく10年間の長期サポートがアナウンスされました。ライフサイクルが長いことによって、利用企業はシステム刷新の頻度を抑えられ、運用の負担を大幅に軽減できるのです。
業界のスタンダードになっている
CentOSはこれまで見てきたようなメリットから、多くの企業に利用され業界の「デファクトスタンダード(事実上の標準)」となっています。様々な用途に対応可能な機能を保持するのに加え、参考になるような活用事例や情報が豊富です。
マイナーなOSのように、困ったことがあったとき必要な情報を見つけられず、途方にくれるということはありません。デファクトスタンダードであるということは、CentOSにとって他のOSと比べた際の重要な優位性なのです。その点でも、CentOSは企業にとって「最も安心して使えるOS」の1つと言えるでしょう。
CentOS 8以降は開発方針が変更
前述の通りCentOS7は2024年6月に10年のサポート期間が終了します。その上でCentOS8に関しても、RHELと高い互換性と安定性を誇る無償OSとして長期的に利用できるものと考えられていました。
しかし、2020年12月8日の公式発表※により、その期待は大きく裏切られることになります。CentOS8以降は、CentOS7までと同じ考え方では使えなくなってしまったのです。
※https://blog.centos.org/2020/12/future-is-centos-stream/
この項では、CentOS8以降、開発方針がどのように変わったか解説します。
RHELの再構築版からアップストリーム版に
CentOS8までは、RHELのソースコードから商標・商用パッケージを含まないかたちでリビルドされた再構築版でした。しかし2020年12月の公式発表をみると、その方針は大きく変更されています。
より具体的には、これまでCentOSはRHELのソースコードをもとに開発や改修が行われてきました。RHELに新しい機能が実装された際も、この流れは変わりません。
それに対し今後は、新しく開発された機能がRHELより前にCentOSの後継にあたる「CentOS Stream8」へ導入されます。その上で問題がなければRHELにも導入されるという流れになるのです。
CentOSは今後、RHELの「アップストリーム版」として開発が継続されることになります。アップストリーム(upstream)は、「上流へ」という意味を示す英単語で、その反対となる英単語がダウンストリーム(downstream/下流へ)です。
アップストリーム・ダウンストリームとは、関連するソフトウェアの位置関係(関係性)を表しています。Linuxのようなオープンソースのソフトウェアは、ライセンスに基づき改修を行った上で再配布が可能です。
このとき、大元のオープンソースソフトウェアに対し再配布バージョン(=ディストリビューション)は「ダウンストリーム版」にあたります。逆にディストリビューションからみれば、大元のオープンソフトウェアは「アップストリーム版」となるのです。
この関係性をRHEL8とCentOS8、さらにCentOSの後継である「CentOS Stream8」に当てはめてみましょう。
↑上流
↓下流 |
CentOS Stream8 | RHEL8に対して「アップストリーム版」 |
---|---|---|
RHEL8 | ・CentOS Stream8に対して「ダウンストリーム版」 ・CentOS8に対して「アップストリーム版」 |
|
CentOS8 | RHEL8に対して「ダウンストリーム版」 |
この変化は、CentOSが今後RHELの開発環境として位置づけられることを意味しています。
サポート期間の変化
CentOS7までは、RHELと同様に10年という長いサポート期間が大きなメリットとなっています。一方、2019年9月にリリースされたCentOS8に関しても、本来は2029年5月がサポート期限でした。
しかし2020年12月の公式発表で、このサポート期限を2021年12月までに短縮すると発表されたのです。これで多くの利用企業が混乱することになります。(一部ベンダーでは救済措置として公式とは別に、それぞれ2029年12月までの延長サポートを実施予定。)
またCentOSの後継であるCentOS Stream8のサポート期間についても、5年(2019年9月~2024年5月)と、これまでより短く設定されました。CentOS Stream8がRHELの開発環境であるという立ち位置を考えると、今後もこれ以上の長期サポートが提供される期待は薄いでしょう。
もちろん有償のRHELに乗り換えれば、10年間の長期サポートを受けられます。代わりに、言うまでもありませんがCentOSと異なり、利用にあたって保守サポート費用を支払わなくてはなりません。
CentOSを使い続けるべきか否か判断する際のポイント
CentOSの今後をみると開発環境へ位置づけがかわったりサポート期間が短くなったりなど、これまでのように使えなくなった点は否めません。その反面、新しい機能をRHELより早く試せる点や、長期サポートが必要になった際はスムーズにRHELへ移行可能といったメリットもあります。
それらの点をふまえた上で、CentOSの開発方針が大幅に変更されたことで、社内環境のポリシーと合わない場合は移行も必要となるでしょう。一方でCentOSのポリシーが変遷されてきた経緯からもわかるように、運用の仕組みやライフサイクルも見直しが必要になるかもしれません。昨今では日々、革新的な機能が開発されており、これらの利用も新しく検討する必要もあります。
いずれにしろ、今一度現行システムの方針について、見直す良い機会とは言えるでしょう。
採用OSの変更を検討する際に確認すべきポイント
仮にCentOSからの変更を検討する際は、何を目指すかと譲れない点、妥協可能な点など要件を改めて洗い出すとよいでしょう。より具体的には、以下にあげるポイントをチェックします。
- 使用中のアプリケーションが求める要件を満たすか
- 移行や教育にかかるコストを見積もった上で、OSの移行を許容できるか
- サポートの期間はどの程度必要か
- 現在使用しているクラウドの環境で利用可能か
これらの点を踏まえて、OSを変更する際には、大きなトラブルが発生しないよう移行のロードマップを綿密に検討する必要があります。
まとめ
CentOSはRHELの完全互換を目指した無償のLinuxディストリビューションです。無償ながら、RHELに相当する安定性・機能性を誇ります。さらにサポート期間が10年間と長いことなどから、多くの企業が利用するデファクトスタンダードのOSとして地位を確立してきました。
しかし2020年12月の公式発表により、CentOSの開発方針が大きく変わることがアナウンスされたのです。CentOSはRHELの再構築版から、開発環境に適したアップストリーム版となります。さらにサポート期間も、これまでの10年から5年へ短縮されました。
これまでCentOSを利用してきた企業は、この開発方針変更に伴い今後もCentOSを使うべきか判断を求められているのです。これら企業は、自社の環境に新しいCentOSが適しているか詳細に確認する必要があります。
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