リージョンとゾーンは、いずれもクラウドを選ぶ際に把握しておくべき概念です。クラウドサービスを選定するにあたり、リージョンとゾーンを適切に選ぶ必要があります。これらの選び方によって、クラウドサービスの使い勝手や安定性が大きく変わる可能性があるためです。この記事では、リージョン・クラウドそれぞれの意味や違い、さらには密接に関連する可用性について解説します。
目次
クラウドコンピューティングにおける「リージョン」とは
クラウドコンピューティングにおいて「リージョン」とは、サービスを運用する機器が収容されたデータセンターの存在する地域を指します。大規模なクラウドベンダーは、日本国内や世界各地に複数のリージョンを用意しています。各リージョンは完全に独立したシステムで運用されており、互いに影響を与えることはありません。
リージョンについてより深く理解するために、1つ例をあげてみてみましょう。仮にクラウドベンダーが以下のようなリージョンを用意していたとします。
・東京リージョン
・大阪リージョン
・アメリカリージョン
この例では、東京・大阪・アメリカのデータセンターに、それぞれ別々のシステムが用意されていることになります。各リージョンはそれぞれ独立しており、たとえば東京のリージョンで障害が発生しても、大阪やアメリカには影響がありません。
ゾーンとは?リージョンとの違いも
「ゾーン」とは、リージョンのなかでさらに分割されたシステムの単位を指します。各リージョンには必ず1つ以上のゾーンが存在しており、ゾーンごとにそれぞれ独立したシステムが運用されています。同一リージョンでも、ゾーンが異なると物理的に離れた場所でそれぞれのシステムが動作しているわけです。
こちらも一例をみてましょう。仮に以下のようなリージョン・ゾーンが存在していたとします。
東京リージョン | 大阪リージョン | アメリカリージョン |
---|---|---|
・東京第1ゾーン ・東京第2ゾーン ・東京第3ゾーン | ・大阪第1ゾーン ・大阪第2ゾーン | ・アメリカ第1ゾーン |
この例では合計6ゾーンが運用されており、各ゾーンでそれぞれ独立したシステムが動作していることになります。たとえば東京第1ゾーンに障害が発生しても、東京にある他のゾーンや他リージョンには影響しません。ただし、たとえば東京で地震等の大規模な災害が発生した際には、東京リージョン全てのゾーンが全て機能しなくなる可能性もあります。
リージョン/ゾーンの選び方
リージョンやゾーンは、目的によって様々な選び方があります。ここでは、選び方の主なポイントを紹介します。
距離/地理的条件
まずあげられるのが距離に関わる選び方です。システムを使うユーザーと距離が近いリージョンの方が、通信の遅延が小さくなり応答時間が速くなります。そのためサーバーの応答速度を重視する場合は、ユーザーとより近いリージョンのサービスを選ぶと良いわけです。
逆にユーザーと距離が離れたリージョンを利用することで、自然災害のリスクを軽減する選び方もあります。たとえばユーザーが東京にいて大阪のリージョンを使えば、仮に東京で自然災害が発生しても大阪のリージョンには影響がありません。東京・大阪両方のリージョンで同一のアプリケーションを運営して、自然災害発生時のリスクを軽減する方法もあります。
提供機能/サービス
クラウドベンダーによっては、リージョンやゾーンごとに提供機能やサービスが異なることも少なくありません。希望の機能やサービスを使うために、あえて遠いリージョンを選ぶ必要性が発生することもありえるわけです。
リージョンが存在する国の法律
そのリージョンが存在する国の法律にも注意をする必要があります。国ごとにデータの取り扱い方に関するルールが異なるためです。日本のユーザーは、海外のリージョンを利用する際は準拠法をチェックし、自社の運用に影響がないか判断が求められます。
リージョンとゾーンで可用性を高める
リージョンとゾーンを選び使い分ける際の大きなポイントとして、「可用性」があげられます。ここでは可用性とはどういった意味かや、リージョンとゾーンの選び方でどのように可用性を向上させらせれるか解説します。
そもそもクラウドにおける可用性とは?
クラウドにおいて「可用性」とは、システムが障害等で停止せず稼働し続けられる能力を指します。その上で可用性が高く、継続的に長時間システムが稼働し続けられる状態を「高可用性」と呼びます。
可用性をはかる指標として用いられるのが「稼働率」です。クラウドにおいて稼働率とは、一定時間のなかでシステムが稼働した割合を指します。たとえば1ヵ月(30日)のなかで障害が発生した合計3時間を除いてシステムが稼働していた場合、稼働率は以下のように求められます。
・1ヵ月の中でシステムが正常に稼働した時間
24時間×30日-3時間<障害によりシステムが停止した時間>=717時間
・稼働率
717時間<システムが稼働した時間>÷(24時間×30日)×100≒99.6%
このクラウドの稼働率は99.6%となります。
一方、可用性と似た用語として「信頼性」がありますが、これらはそれぞれ異なる概念です。稼働率で表される可用性に対し、信頼性は障害に対する耐性を表し、平均故障間隔(平均連続稼働時間)で計測されます。たとえば90時間ごとに1時間停止するシステムがあれば平均故障間隔は90時間です。
可用性を高めるリージョンとゾーン
クラウドを利用する企業にとって、高可用性のシステムをどのように実現するかは非常に大きな課題です。可用性の低いシステムでは、システムが停止し業務に支障が生じる時間が長くなってしまいます。
クラウドシステムの可用性を高める方法として、複数のリージョンやゾーンを使う方法があります。たとえば複数のリージョンを併用すれば、特定のリージョンが存在する地域に自然災害が発生しても、別リージョンでシステムを継続可能です。また複数のゾーンを併用しておけば、物理的な故障に備えられます。
より分かりやすく、以下の例でみてみましょう。
東京リージョン | 大阪リージョン | アメリカリージョン |
---|---|---|
・東京第1ゾーン ・東京第2ゾーン ・東京第3ゾーン | ・大阪第1ゾーン ・大阪第2ゾーン | ・アメリカ第1ゾーン |
この例で東京と大阪のリージョンを併用することにより、仮に東京で自然災害が発生しても大阪のリージョンでシステムを継続できます。場合によっては、東京とアメリカというように国を分けてシステムを運用する方法もあります。また、この中で複数のゾーンを併用すれば、そのうちのいずれかに物理的な障害が発生しても、システムの継続が可能です。
まとめ
「クラウドコンピューティングにおけるリージョン」とは、サービスを運用するための機器が設置されたデータセンターの地域を指します。一方、「ゾーン」とは、同一リージョンの中で分割されたシステムの単位です。1つのリージョンには1つ以上のゾーンが存在します。リージョンごと、ゾーンごとに別々のシステムが運用されており、互いに影響することはありません。
リージョンやゾーンの選び方として、地理的な距離をみる方法があります。よりユーザーに近いリージョンの方が、応答時間が短くなります。リージョン・ゾーンごとに提供機能やサービスが異なる場合もあり、選択の際には注意が必要です。
その他、複数のリージョンとゾーンを併用することによって、クラウドで運営する自社システムの可用性を向上させることもできます。特定リージョン・ゾーンに障害が発生しても、別リージョン・ゾーンでのシステム運用を継続できるためです。
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