Excelは企業の業務を長年支えてきたソフトウェアですが、様々な問題を含むこともよく指摘されています。多くの企業がDXを推進している現在では、これら問題による影響が顕著になっている状況です。
こういった背景から注目されている脱Excelですが、実際どうすればよいかわからないという方も少なくないでしょう。この記事では脱Excelとは何かや進め方、脱Excelに適したツールの種類を解説しました。この記事の内容を理解することで、脱Excelをすすめるため自社で何から始めるべきかイメージできるようになります。
目次
脱Excelとは | Excelが苦手な業務を別のツールに置き換えること
脱ExcelとはExcelが苦手とする業務について、より適切なツールに置き換えて対応することです。
Excel自体は非常に便利なツールですが、長年利用しているなかで様々な制約や弱点があることを感じている方は多いでしょう。そこでExcelが苦手な業務を別ツールに置き換えることにより、業務効率化や生産性向上を目指すのです。
Excelから置き換えるべき苦手な業務、Excelが得意な業務とは?
脱Excelとは全ての業務について、Excelから他のツールへ切り替えることを目指すものではありません。Excelが得意な業務については、今後もExcelを使い続けてもよいのです。表計算ソフトであるExcelは、少量のデータ管理やシンプルな計算、グラフや表を作ったレポート作成などを得意とします。
一方でExcelは大量のデータ管理や複数人での共同編集、バージョン管理などは不得意です。実際、これら作業をExcelでおこなおうとして、手間取ったり非効率に感じたりしたことがある方は多いでしょう。
たとえばExcelで大量のデータを分析しようとすると、応答しなくなったりフリーズしたりします。その結果、集計作業に時間がかかる上に、作業者にストレスがかかることになるのです。
Excelが苦手な業務 別ツールに置き換えるべき | Excelが得意な業務 別ツールに置き換える必要はない |
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大容量のデータ管理や集計、分析 複数人での共同編集・共有 バージョン管理が必要な業務 複雑なアクセス権限の設定が必要な業務 複数のデータ統合が必要な業務 プロジェクト管理 タスク管理 顧客関係管理(CRM) | 少量のデータ管理や集計、分析 帳票の作成 シンプルな計算 グラフや表を使ったレポートの作成 |
これらExcelの特性をふまえ、自社のどの業務について脱Excelをするかを決定します。
DX化推進のため脱Excelが注目される理由・背景
DXとはデジタルトランスフォーメーション(digital transformation)を略した言葉で、デジタル技術を活用した変革という意味です。DXではビッグデータやIoTなどのデジタル技術を駆使して、業務プロセスから企業文化・風土までの変革を目指します。企業が市場で生き残り、国際的な競争力を維持するためにも、DXの推進が求められているのです。
そうしたなか、Excelを扱う業務がDX推進の障壁となっていることが少なくありません。
たとえばDXでは、ビッグデータを活用したデータ分析をおこなう機会が多いです。しかしExcelで大量のデータを扱おうとすると、処理に時間がかかったり動作が停止したりしてしまいます。
VBAやマクロといった高度な専門知識が駆使されたExcel業務が多く、担当者以外には理解できず属人化が進んでいることも問題です。その結果、新しいツールの導入など業務の改善・改革が進められないケースも多く見られます。
またExcelでは共同編集・共同作業がし辛く、リモートワークの普及がすすむなかで業務効率を下げる原因となることもしばしばです。DX推進のためにも、脱ExcelをすすめExcelが苦手とする業務を他ツールに置き換えることが求められています。
脱Excelのメリット
脱Excelの概要やDX推進に有効であることをみてきました。ここでは一歩進んで、脱Excelの具体的なメリットをみていきましょう。
大量のデータを処理する際などのパフォーマンスが向上する
Excelで大量のデータを処理しようとすれば、処理速度に限界があるのは否めません。脱Excelによってデータベースや大量のデータ処理に適したツールを使えば、ビッグデータも高速に処理できるようになります。その結果、データ分析の速度が向上しDX推進にもつながるのです。
共同作業や情報の共有がしやすくなる
Excelは共同作業や情報の共有が苦手です。Excelで共同作業をする場合、OneDriveなどのクラウドストレージが必要となる上に、マクロが実行できないなどの制約もあります。
またExcelを共有する場合、データ更新後にクラウドストレージに保存したり、メールに添付して送信したりといった作業が必要です。ファイルの更新が続くと、最新のファイルがどれかわからなくなることも少なくありません。
共同作業・情報共有を前提としたツールを使うことで、Excelの問題を解消し業務効率を高めることができます。
属人化の予防につながる
Excelの業務では高度なVBAやマクロ、複雑な関数などが使われ担当者以外が扱えないといったケースが少なくありません。またファイルの作成者以外は仕組みが分からず、ブラックボックス化してしまうこともしばしばです。
誰でも扱いやすいツールに切り替えることによって、業務の属人化を防げます。複雑な仕組みを構築しなくても、目的の業務をこなせるツールを導入するのも有効です。
フォーマットを統一できる
Excelでは作業者によって、異なるフォーマットやテンプレートが使われることも少なくありません。部署ごとや取引先ごとにフォーマットが異なると、情報の共有や連携にも支障をきたします。
専用のレポート作成ツールなどを採用することで、フォーマットを統一しスムーズに連携や情報共有をすすめられるようになるのです。
人的ミスを削減できる
Excelへのデータ入力や計算、編集は手動でおこないます。そのためExcelでは、人的ミスが発生しやすいのです。より簡単に作業の自動化を実現できるツールに切り替えることで、人的ミスを削減できます。
他システムと連携がしやすくなる
ExcelはMicrosoft Office以外との連携が想定されていません。一方、昨今では様々な外部システムと連携が可能なツールが増えています。そのため脱Excelをすすめることで、他システムとの連携もしやすくなります。
カスタマイズにかかる工数を削減できる
Excelはマクロや関数などを使って、複雑なカスタマイズも可能です。その反面、複雑なカスタマイズをするほど、膨大な工数が消費されるのも否めません。テンプレートなどの機能が充実したツールを使うことにより、カスタマイズにかかる工数を大幅に削減できます。
脱Excelのデメリット・注意点
脱Excelには多くのメリットがありますが、ここであげるデメリット・注意点によりすすめられないケースもあります。以下、脱Excelの際に気を付けるべきデメリット・注意点をみていきましょう。
Excelは使い慣れているため脱Excelのモチベーションが起きづらい
Excelは様々な問題を含んでいるとはいえ、多くの従業員はExcelを使うのに慣れています。新しいツールを導入する場合は、学習のための時間や手間も必要です。
そのため現場で脱Excelのモチベーションが起きづらい点は否めません。脱Excelの意義やメリットを周知し、認識を共有することが求められます。
新しいツールの導入に手間やコストがかかる
脱Excelを実現するにあたり、新しいツールを導入するには手間もコストもかかります。ツールやシステムの導入費用はもちろんのこと、ツールの使用方法を把握するための学習コストも小さくはないでしょう。
ただし脱Excelのメリットが大きいことを考えると、最初のコストも中長期的にみれば十分に回収できます。脱Excelの効果が大きい業務から、無理のない範囲で進めていくとよいでしょう。
脱Excelの進め方
脱Excelはどのようにすれば、スムーズにすすめられるでしょうか。以下、一般的な脱Excelの進め方をみていきましょう。
①Excelを利用している業務を洗い出す
まずは自社で、どのような業務でExcelを利用しているか全て洗い出します。Excelを業務に使うなかで、問題が起こっていないか不便ではないかもあわせて確認しましょう。
②脱Excelが推奨される業務を抽出する
全ての業務で、脱Excelを実現しなければいけないわけではありません。従来通りExcelを使った方が、効率的に進められる業務も多いと考えられます。問題が多かったり不便だったりして、脱Excelをすすめるべきか業務ごとに検討するのです。
③移行先となるツールを選定する
脱Excelをすすめるべき業務を抽出できたら、次に移行先となるツールを選定します。新しいツールで従来通り業務を完了できるか、Excel利用時の問題を解決できるか確認しましょう。1つのツールで複数の業務をおこなえる場合も少なくありません。
脱Excelの移行先としておすすめできるツールの例
脱Excelの移行先として、どのようなツールを使えばよいでしょうか。ここでは移行先におすすめできるツールの例を解説します。
Webデータベース | クラウド上のデータベースシステム
Excelは表計算を目的としたソフトウェアなので、大量のデータを処理するのに適していません。
それに対し、クラウド上のデータベースシステム「Webデータベース」であれば、ビッグデータの処理も可能です。Webデータベースは、データ分析やレポート機能も優れている上に、管理画面もわかりやすいことが多くなっています。
ノーコード・ローコード開発ツール | 自社で迅速に業務アプリを開発可能
ノーコード開発ツールを使えば、専門的なプログラミング知識なしでシステムを開発できます。一方ローコード開発ツールを使えば、難しいソースコードの記述をほとんどせずにシステム開発が可能です。
ノーコード・ローコード開発ツールを使うことで、高度な専門知識がなくても自社内で必要なシステムや業務アプリを開発できます。脱Excelに必要なツールも、自社内で開発できるようになるのです。開発会社を通すことがないことから、開発にかかる期間も短くてすみます。
なお、多くのWebデータベースは、ノーコード・ローコード開発ツールによって開発が可能です。一般的なノーコード・ローコード開発ツールはデータベースを操作・利用するための機能も提供しています。
Forguncy(フォーガンシー)
ForguncyはExcelライクなレイアウトで、簡単に業務アプリを作成できるノーコード・ローコード開発ツールです。Excel同様の関数も搭載しており、Excelに慣れた方であれば、無理なくForguncyを使えるようになるでしょう。
Forguncyはデータベース機能を内蔵していますが、Oracle DatabaseやMicrosoft SQL Serverなどの外部データベースと接続する機能も搭載しています。それらを結合し、1つのビューとして扱うことも可能です。
なお、Forguncyは基本的にはオンプレミスで利用するツールですが、KAGOYAのForguncyプランのように安定した専用サーバー環境で利用することでクラウド利用が可能になります。
サーバーの運用管理も任せられるうえ、月額も固定費となりますので、Forguncyを利用される方には多くのメリットを得られるサービスとなっています。
Excel業務を効率化!ノーコードWebアプリ作成ツールForguncy(フォーガンシー)
社内のあちこちに散在しているExcelやAccessの業務を、簡単にWebアプリ化・クラウド化して集約できないか、と考えたことはないでしょうか。けれども開発や運用のコストがかかりすぎる・・・そんな課題を解決できるノンプログラミングツールが、メシウス(旧グレープシティ)株式会社の「Forguncy(フォーガンシー)」です。 今回紹介するノンプログラミングツール「Forguncy」は、Excelでの非…
AppSuite(アップスイート)
AppSuiteは、自由なレイアウトと高い操作性で業務アプリを作成できるノーコード・ローコード開発ツールです。ExcelやWordで作成した紙の申請書を、画像化してシステム化する機能も備えています。
AppSuiteは、グループウェア「desknet’s NEO」のオプションとして利用することができますので、連携に優れている点も特徴的です。もちろんAppSuiteで作成した業務アプリは、desknet’s NEOの一機能として利用することが可能です。
注意点としては、社内でdesknet’s NEOの利用者が多くなってくると、ユーザー課金という事もあり費用が大きく膨れ上がってしまう可能性があります。
こういった場合はKAGOYAのdesknet’s NEO専用プランのように月額費用を抑えられるサービスの利用を検討する必要があります。当然このサービスを利用する場合であってもAppSuiteを利用することもできます。
Kintone(キントーン)
Kintoneはグループウェアで知られるサイボウズ社によるノーコード・ローコード開発ツールです。Kintoneを使えばドラッグ&ドロップなどの簡単な操作だけで、自社専用の業務アプリを作成できます。
業務アプリ作成用に適した拡張機能も豊富で、より自社業務にフィットした業務アプリを作成可能です。
まとめ
脱ExcelとはExcelが苦手とする業務を別ツールに切り替えることで、業務効率化・生産性向上を目指す手法です。
Excelは様々なシーンで使われてきた優秀なソフトウェアですが、膨大なデータの処理に適していないなどの問題が顕著になっています。DX推進が必要とされる昨今では、Excelによる業務がボトルネックとなっていることが少なくありません。
DX化推進に適している、Webデータベースやノーコード・ローコード開発ツールといった代替ツールも注目されています。従来Excelでおこなっていた業務をこれらに置き換えることで、脱Excelを実現できるのです。
脱Excelを成功させることにより、自社のDXを大幅に推進させることにもつながります。