この記事では、CentOSの代替として注目を集めるRocky Linuxについて詳しく解説します。
CentOS 8のサポート終了に伴い、安定性と互換性を求めるエンタープライズユーザーやシステム管理者の方々に、特徴や利点、インストール方法、CentOSからの移行手順などを紹介します。
このディストリビューションを導入することで、長期的なサポートと高い安定性を確保しつつ、コスト削減も実現できる可能性があります。
目次
Rocky Linuxが誕生した背景
Rocky Linuxは、CentOS 8のサポート終了とCentOS Streamへの移行という背景から誕生しました。
長年企業で使用されてきたCentOSの突然の方針転換に対し、安定性と互換性を重視するユーザーのニーズに応えるために開発されました。
CentOSの創設者であるグレゴリー・クルティスが中心となり、コミュニティ主導のプロジェクトとして立ち上げられ、Red Hat Enterprise Linuxとの互換性を維持しつつ、無償で利用できる新たな選択肢として注目を集めています。
CentOS 8のサポート終了
CentOS 8のサポート終了は、多くのユーザーに衝撃を与えました。Red Hat Enterprise Linux (RHEL) のダウンストリームとして長年信頼されてきたCentOSが、2020年12月に突如としてサポート期間の短縮を発表したのです。当初2029年まで続くと予定されていたサポートが、2021年12月31日で打ち切られることになりました。
この決定により、多くの企業や組織が長期的な計画の見直しを迫られ、代替策を模索する必要に迫られました。CentOS 8のサポート終了は、安定性と長期サポートを重視するユーザーにとって大きな課題となり、新たなディストリビューションの誕生につながる重要な出来事となりました。
CentOS Streamへの移行の課題
CentOS StreamへのRed Hat Enterprise Linux (RHEL)の上流移行は、多くの企業やユーザーにとって課題となりました。CentOS Streamは、RHELの開発版として位置づけられ、最新の機能や更新が先行して導入されます。しかし、この変更により、安定性を重視する多くのユーザーにとっては、予期せぬ問題や互換性の課題が生じる可能性が高まりました。
また、長期的なサポートや、既存のCentOSシステムとの互換性維持が難しくなる懸念も生じました。これらの課題に直面したユーザーや企業は、安定性と互換性を維持しつつ、無償で利用できる代替案を求めるようになり、誕生につながりました。
Rocky Linuxとは
Rocky Linuxは、CentOS 8のサポート終了を受けて誕生した、Red Hat Enterprise Linux (RHEL)と完全互換性を持つオープンソースのディストリビューションです。CentOSの創設者であるグレゴリー・クルティスが中心となって開発され、エンタープライズ環境での使用を想定しています。
無償で利用可能で、長期的なサポートを提供することを目指しています。また、CentOSの精神を引き継ぎ、コミュニティ主導の開発モデルを採用しており、安定性と信頼性を重視しています。企業や組織が安心して利用できる、RHELの代替オプションとして注目を集めています。
ここからはCentOSやAlma Linuxとの違いについて見ていきましょう。
Rocky LinuxとCentOSの違い
Rocky LinuxとCentOSの最大の違いは、アップストリームとダウンストリームの関係性にあります。CentOSは従来、Red Hat Enterprise Linux (RHEL)のダウンストリームとして機能し、RHELのリリース後にそのコードをベースに構築されていました。
一方、Rocky Linuxは、RHELと同時期にリリースされることを目指すアップストリーム互換ディストリビューションとして開発されています。これにより、より迅速にセキュリティアップデートやバグ修正を提供できる可能性があります。
コミュニティ主導の開発モデルを採用し、エンタープライズ環境での使用を想定した安定性と信頼性を重視している点は、CentOSと共通しています。ただし、CentOS Streamとは異なり、RHELの安定版をベースにしているため、より保守的なアプローチを取っています。
Rocky LinuxとAlmaLinuxの比較
Rocky LinuxとAlmaLinuxは、どちらもCentOS 8のサポート終了を受けて誕生したRHEL互換のLinuxディストリビューションですが、いくつかの違いがあります。
Rocky Linuxは、CentOSの共同創設者であるGregory Kurtzerによって立ち上げられたプロジェクトで、CentOSの精神を引き継ぐことを目指しています。一方、AlmaLinuxはCloudLinux社が主導して開発されました。
開発体制の面では、Rocky Linuxはコミュニティ主導型であるのに対し、AlmaLinuxは企業がバックアップしている点が異なります。
パフォーマンスとセキュリティに関しては、両者ともRHELとの高い互換性を維持しており、大きな差異はありません。ただし、AlmaLinuxの方がリリースサイクルが若干早い傾向にあります。また、AlmaLinuxもオープンソースプロジェクトとして運営されています。
選択の際は、コミュニティのサポート体制や、既存のインフラとの親和性を考慮することが重要です。
Rocky Linuxの特徴と利点
Rocky Linuxは、CentOSの後継として注目を集めるLinuxディストリビューションです。その特徴として、以下の点を挙げることができます。
- RHEL(Red Hat Enterprise Linux)との高い互換性
- コミュニティ主導の開発体制:
- 無償で利用可能
- 長期的なサポート
- エンタープライズ級の安定性
これらの特徴により、多くの組織や個人ユーザーにとって魅力的な選択肢となっています。ここからは各特徴について説明します。
RHELとの高い互換性
Rocky LinuxはRHEL(Red Hat Enterprise Linux)との高い互換性を特徴としています。これは、Rocky LinuxがRHELのソースコードを基に開発されているためです。RHELと同じパッケージ管理システムやライブラリ、ツールを使用しているため、RHELで動作するアプリケーションやスクリプトは、ほとんどの場合そのまま動作します。
また、RHELのセキュリティアップデートやバグ修正も迅速に取り込まれるため、常に最新の状態を維持できます。この互換性により、企業はRHELからの移行を容易に行うことができ、ライセンスコストを削減しつつ、高い安定性と信頼性を維持することが可能となります。
コミュニティ主導の開発体制
Rocky Linuxの大きな特徴の1つが、コミュニティ主導の開発体制です。これは、オープンソースの精神に基づき、世界中の開発者やユーザーが自由に参加し、協力して開発を進めていくことを意味します。コミュニティメンバーは、バグの報告やパッチの提供、新機能の提案など、さまざまな形で貢献できます。
この体制により、ユーザーのニーズに迅速に対応し、透明性の高い開発プロセスを実現しています。また、特定の企業の利害に左右されることなく、コミュニティ全体の利益を優先した意思決定が可能となります。結果として、より安定性が高く、信頼性のあるOSの開発につながっています。
無償で利用可能
Rocky Linuxの大きな特徴の1つは、完全に無償で利用できることです。商用利用を含め、ライセンス料金を一切支払うことなく自由に使用できます。これは、オープンソースソフトウェアの理念に基づいており、企業や個人を問わず、誰でも制限なくRocky Linuxを導入できることを意味します。
また、アップデートやセキュリティパッチなども無料で提供されるため、長期的な運用コストを抑えることができます。この無償利用可能な特性により、多くの組織が選択し、安定性と信頼性の高いサーバー環境を低コストで構築できるようになっています。
長期的なサポート
Rocky Linuxは、長期的なサポートを提供することで、ユーザーに安心感と安定性をもたらします。具体的には、各メジャーバージョンに対して最低10年間のサポートを約束しています。これは、セキュリティアップデートやバグ修正が継続的に提供されることを意味し、企業や組織が長期的な計画を立てやすくなります。
また、システムの大規模な移行や更新の頻度を減らすことができ、運用コストの削減にもつながります。さらに、長期サポートにより、ソフトウェアの互換性が維持されるため、既存のアプリケーションやシステムの安定稼働が保証されます。このような特徴は、特に企業の重要なインフラストラクチャーやミッションクリティカルなシステムにとって非常に魅力的です。
エンタープライズ級の安定性
Rocky Linuxは、エンタープライズ環境での使用を念頭に置いて開発されており、高い安定性を誇ります。この安定性は、Red Hat Enterprise Linux (RHEL) との互換性を維持しつつ、厳格な品質管理プロセスを経て実現されています。システムの信頼性が重要視される企業や組織にとって、Rocky Linuxは理想的な選択肢となります。
長期的なサポートと定期的なセキュリティアップデートにより、システムの安定稼働が保証されます。また、大規模な環境でも安定したパフォーマンスを発揮し、ダウンタイムを最小限に抑えることができます。これらの特性により、Rocky Linuxはミッションクリティカルな業務システムにも安心して導入できる、エンタープライズ級の信頼性を備えたOSとして評価されています。
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もちろんRocky Linuxも選択でき、本格的に利用されたい方から試しに触ってみたいという方まで幅広いニーズに応える事ができます。
Rocky Linuxのサードパーティー対応状況
Rocky Linuxは、Red Hat Enterprise Linux (RHEL) との高い互換性を持つことから、多くのサードパーティーソフトウェアベンダーがRocky Linuxをサポート対象としています。主要なデータベース管理システムやウェブサーバー、開発ツールなどが問題なく動作することが確認されています。
また、クラウドプロバイダーも積極的にRocky Linuxのサポートを進めており、主要なクラウドプラットフォームでRocky Linuxのイメージが提供されています。セキュリティソフトウェアベンダーも、Rocky Linuxに対応した製品を提供しており、エンタープライズ環境での利用にも適しています。
ただし、一部のベンダーでは対応が遅れている場合もあるため、特定のソフトウェアを利用する際は、事前に対応状況を確認することをおすすめします。Rocky Linuxコミュニティは、サードパーティーベンダーとの協力関係を強化し、さらなる対応拡大を目指しています。
Rocky Linux 8とRocky Linux 9の違い
Rocky Linux 8とRocky Linux 9は、それぞれRed Hat Enterprise Linux (RHEL) 8と9をベースにしており、主な違いはカーネルバージョンやパッケージの更新にあります。Rocky Linux 9では、より新しいカーネルが採用され、パフォーマンスと安定性が向上しています。
また、セキュリティ機能が強化され、最新の暗号化技術が導入されています。システム管理ツールも改善され、より効率的な運用が可能になりました。
ただし、Rocky Linux 8は長期サポート(LTS)版であるため、安定性を重視するユーザーにとっては依然として魅力的な選択肢です。アプリケーションの互換性や特定の要件に応じて、適切なバージョンを選択することが重要です。
Rocky Linuxのインストール方法
Rocky Linuxのインストールは、以下の手順で進めていきます。
- インストールメディアの準備
Rocky Linuxの公式サイトからISOファイルをダウンロードし、USBメモリやDVDに書き込みます。書き込みにはRufusなどのツールを使用します。 - インストーラの起動
インストールするPCにインストールメディアを接続し、BIOSまたはUEFI設定で起動順序を変更してインストールメディアから起動します。 - 言語の選択
インストーラの画面で使用する言語を選択します。通常は「日本語」または「English」を選びます。 - 時刻と日付の設定
タイムゾーンを選択し、時刻と日付の設定を行います。 - ネットワーク設定とホスト名の入力
ネットワーク接続を設定し、ホスト名を入力します。インターネットに接続されていることを確認してください。 - インストール先を選択
インストール先のディスクを選びます。パーティションの設定は自動または手動で行うことができます。 - ソフトウェアの選択
使用目的に応じて、「最小限のインストール」か「カスタムオペレーティングシステム」を選択します。 - rootパスワードとユーザーの設定
rootユーザーのパスワードを設定します。管理者権限の無い一般ユーザーもここで作成できます。 - インストールの開始と完了
設定内容を確認し、「インストール開始」をクリックします。インストールが完了したらシステムを再起動し、Rocky Linuxにログインします。
このインストール手順は比較的シンプルですが、初心者の方は各ステップを慎重に進めましょう。特にパーティション設定やネットワーク設定では、環境に応じた適切な選択が必要になります。
また、⑧ではセキュリティの観点から、適切な複雑差を持つパスワードの設定を心がけましょう。
インストール後は、必要なアップデートを適用し、使用目的に合わせてソフトウェアをインストールすることで、Rocky Linuxの環境が整います。
CentOSからRocky Linuxへの移行方法
CentOSからRocky Linuxへの移行は、以下の手順で行います。
- システムのバックアップ作成
移行の準備として、システム全体のバックアップを実施します。重要なデータや設定ファイルを安全な場所に保存しておくことが必要です。 - システムのアップデート
現在のCentOSシステムを最新の状態に更新します。これにより、システムの安定性を維持するための基盤を整えます。 - リポジトリの設定確認
EPELやその他のサードパーティリポジトリを無効にします。これにより、移行中にパッケージが競合するのを防ぎます。 - Rocky Linux移行ツールの取得
Rocky Linuxの公式サイトから、migrate2rockyという移行用スクリプトをダウンロードします。このスクリプトが移行の主な手段となります。 - 移行ツールの実行
migrate2rockyスクリプトを使用して、CentOSからRocky Linuxへの移行を開始します。スクリプトは必要なパッケージの置き換えや設定の調整を行います。 - システム再起動
移行が完了したら、システムを再起動してRocky Linuxでの起動を確認します。再起動後の動作確認が重要です。 - OSバージョンの確認
移行後に、/etc/os-releaseファイルなどでOSバージョンを確認し、システムが正しくRocky Linuxに切り替わっていることを確認します。 - システムの動作確認と不要ファイルのクリーンアップ
サービスやアプリケーションが正常に稼働していることを確認し、移行後に不要になったキャッシュやファイルを削除してクリーンアップします。
この移行プロセスでは、migrate2rockyスクリプトが重要な役割を果たします。ただし、移行前のバックアップと、移行後の動作確認は特に注意が必要です。
また、カスタマイズされたシステムや特殊な設定がある場合は、追加の手動調整が必要になる可能性があります。
移行作業は慎重に行い、問題が発生した場合はバックアップから復旧できるよう準備しておくことが重要です。
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