インターネット利用の快適さは、回線の高速さ以外にも判断できる大切な数値があります。それが「レイテンシ」です。以前からある用語ですが、最近また注目を集めるようになってきました。この数値の高低で何がわかり、その結果どうすればいいのでしょうか。こちらの記事では具体例を交えて、わかりやすく解説しています。
目次
レイテンシの概要とメリット
レイテンシ(latency)とは「通信の遅延」と言われていますが、この説明だと今一つピンと来ないのではないでしょうか。そこで、用語の一部にあるlate(遅いこと)の意味を理解することで、状況に対処して改良する方法が見つかると考えます。
レイテンシの「遅さ」とは何か?
インターネット上で海外にデータが流れていく場合、たとえどんなに高速な回線を利用しても1秒の数千分の1(1msなどの単位が使われる)でも時間がかかります。このことが意味することは、利用者が遠隔地にあるサーバーに対して何かの指示を出してから、サーバーが処理をして利用者に反応を返すまで時間がかかることです。遠隔地のサーバーに指示をする回数が増えるほど、返ってくる反応の微妙な遅れ自体が不利益になる場合があります。その結果、利用中のサービスが使いづらくなることもあるでしょう。
それではレイテンシの測定方法と目標値とは何でしょうか。サーバーについて知識や経験のある方なら、一度は聞いたことのあるやり方です。
レイテンシの測定方法と目標値
測定方法(1) コマンド編
「ping」(「ピング」または「ピン」)というコマンドでの操作により、レイテンシを測定できます。「ping」の主な目的はネットワークがつながっていて、特定の相手とデータ(パケット)のやり取りができるか確認をすることです。コマンドで特定の相手を指定すれば、以下がわかります。
(1) 相手とつながる場合
どの位の時間で反応があったか(pingの送信から戻ってくるまでの往復時間)
(2) 相手とつながらない場合
主な理由(を示す番号)やエラーメッセージ(「要求がタイムアウトしました」など)
戻ってくるまでの往復時間は秒ではなく、ミリ秒が使われています。なおミリ秒(millisecond、記号では ms)は1000分の1秒で100分の1秒ではありません。
pingコマンドの実行例は以下の通りです。Windows 10の場合では、「スタート」→「Windows システム ツール」→「コマンドプロンプト」と進むと、別の専用画面が開きます。
【基本的なコマンド例1】(Yahoo! JAPAN公式サイトの場合)
ping www.yahoo.co.jp
こちらの場合pingの応答時間は11ms(ミリ秒)です。
【基本的なコマンド例2】(カゴヤ・ジャパン公式サイトの場合)
ping www.kagoya.jp
「要求がタイムアウトしました」のメッセージが表示され、pingの応答はありません。その理由は複数あり、サーバーの設定など相手方の事情の場合があります。
測定方法(2) サービス利用編
以下のようなサイトや専用アプリで利用できます。コマンド操作が不要で、見やすい表示になっています。ユーザー登録は不要のためすぐに計測可能です。
- fast.com
- Internet Speed Test(USEN GATE 02)
- Speedtest
目標値
多くの情報がありますが、だいたい以下の数値が理想的と考えられています。
理想的なping値 | 利用者の体感 | 用途・特徴 |
0〜15ms | かなり早く快適 | ZOOMなどでのテレビ会議、リアルタイムでの動画配信サービス、FPS/ TPSなどのオンラインゲーム(注) |
16〜30ms | 速い | オンデマンドでYouTubeなどの動画を視聴 |
31〜50ms | 普通 | 上記以外でのインターネット利用(SNS利用など) |
51ms以上 | 遅い | (100msを超えるとインターネットの利用そのものが難しい) |
(注) ゲームの種類により、16ms以上でもある程度快適に利用できます。
低レイテンシのメリット
ping値が0に近く低レイテンシであればあるほど、一般的には以下のようなメリットが得られます。
- 利用者にとってはサービスが利用しやすく満足度が高くなる
- 提供者にとっては収益向上に貢献する
- ゲームや動画配信などの場合「時差」が限りなく減るため、臨場感が増し継続した利用につながる
- ページの読み込み時間が速くなり、SEOに良い影響を及ぼす(ページの画像やCSSファイルを表示する指示がより速く伝わるため)
レイテンシの改善方法
ping値を可能な限り0に近づける方法をご紹介します。
利用者ができる方法
- ルーターまたはモデムの再起動
- Wi-Fi接続の代わりに有線接続に変更(可能な場合)
- 接続方法をIPv6に変え混雑を避ける(可能な場合)
- 規格が新しいLANケーブルを使用(CAT6以上推奨、有線接続が可能な場合)
- インターネットプロバイダーの変更(可能な場合)
サービスの提供者ができる方法
- 日本国内にサーバーのある高速なレンタルサーバーに切り替える(可能な場合)
- 超低レイテンシの次世代通信規格「5G」に切り替える(可能な場合)
- CDN(コンテンツデリバリーネットワーク)を使用する
- Webサイトの制作時にHTML、CSS、JSなどのファイルを圧縮する
- WordPress利用時に最新バージョンにして、画像の遅延読み込み機能を利用する
【参考サイト】
レイテンシ、およびレイテンシが Google 広告のクリック数とアナリティクスのセッション数に与える影響
https://support.google.com/analytics/answer/4589209?hl=ja
【簡単に測れる】ping値の測定方法まとめ!速度の目安と改善策も
https://www.rbbtoday.com/kurabetenet/ping-speedtest/
CDNは、Webサイトの表示やコンテンツ配信の高速化を担うネットワークです。 動画などの大容量コンテンツを配信する場合やアクセスが集中した状況でも、Webコンテンツの表示と配信をスムーズに行います。 ここではCDNの意味や仕組み、メリット・デメリット、料金体系を分かりやすく解説します。 CDNとは CDNとは「Contents Delivery Network」の略で、Webコンテンツを迅速に、効…
レイテンシと回線速度との違い
同じようですが多くの点で異なります。この章では違いと、低レイテンシが欠かせない事例をまとめています。
どこが違うか
レイテンシ | 回線速度 | |
目指す方向 | できるだけ低(0に近い方がいい) | できるだけ高 |
測定すること | 反応が返ってくる時間 | 1秒間に送ることのできるデータ量 |
単位 | millisecond (ms、ミリ秒) | Mbps (Megabits per second) |
目標 | 30ms以下 (注1) | 25Mbps (注2) |
測定方法 | コマンド、専用サイトやアプリ | 専用サイトやアプリ |
(注1) YouTubeなどの動画視聴の場合。ZOOMなどでテレビ会議、リアルタイムでの動画配信サービス、TPSなどのオンラインゲームの場合は、より低い数値が推奨。
(注2) 動画視聴の場合
低レイテンシが重要となる事例
インターネットで、今この瞬間に誰かと何かを共有する場合です。このような時、少しでも「時差」があると台無しですね。損害が出ないうちに、前章の説明のようにレイテンシの見直しをおすすめします。なお共有の目的や用途により、常に低レイテンシの状態にする必要はありません。
【事例1】 距離が離れた場所をつなぐ業務またはその手段
機関や学会などの国際会議、多国籍企業が拠点間で行うWeb会議のほか、国をまたいだソフトウェア開発などでは重視されるでしょう。
【事例2】 ゲーム「Apex Legends」
高いレイテンシが続きたとえ一瞬でも遅れがあると、意識を集中して操作を続けることは難しくなります。ゲームプレイ画面に状態を常時表示させ、レイテンシなどの数値を確認できるようにしておくことも有効と考えます。例えば「Apex Legends」は、「パフォーマンス表示」の設定によりレイテンシを常時表示することができます。
【事例3】 FXの自動売買
FX会社のサーバーと、トレーダーが利用するサーバーの設置場所はできる限り近くにします。その目的は、自動売買のプログラムを迅速に安定して動かすことです。日本のFX会社を選ぶ場合は、トレーダーが利用するサーバーも日本国内にあった方が、少しでもping値は下がり低レイテンシとなります。なおこの場合「トレーダーが利用するサーバー」として、Windows VPSのリモートデスクトップ機能が広く利用されています。
カゴヤのサーバー研究室では以下の記事で、FXで自動売買するためにWindows VPSをどのように設定したらいいか解説しています。
【VPS活用】MT4(メタトレーダー4)のダウンロード&インストールまでを画像で解説!~前編~
FX会社が提供するチャートとは別に、機能がより豊富でカスタマイズがしやすいMT4が現在定着しています。この記事では前編として、MT4のダウンロードとインストール、そして起動方法を解説しています。さらにMT4を24時間動作させるために、より安定したWindows VPSについても補足しています。ぜひ万全の体制でFXに取り組んでいきましょう。 MT4(メタトレーダー4)とは? MT4とは「MetaTr…
まとめ
サービスの利用者が円滑に使うことができるよう、その提供者は低レイテンシを目指すことが大切です。その改善方法は複数あります。物理的な距離を短くすることも有効です。例えば日本国内に限定したサービスをインターネットで提供する場合、たとえ割高となっても国内にあるサーバーを選ぶことをおすすめします。
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