VPS(Virtual Private Server)は、日本語に訳すと「仮想専用サーバー」となります。1台のサーバーを複数のユーザーで共有する点は共用サーバーと同じですが、VPSでは、仮想的に専用サーバーと同様の自由度・性能を利用できるよう設定されています。ここでは、VPSの魅力や性能、そしてメリット・デメリットを初心者の方にも分かりやすくまとめました。
VPSの仕組み、レンタルサーバーやクラウドとの違い
VPSと共用サーバーとの大きな違いは、上述の通り自由度や利用できるサーバーの性能です。レンタルサーバー=共用サーバーというイメージの方も多いと思いますので、ここでは、VPSと共用サーバーの違いについて詳しく解説いたします。
ユーザーごとにゲストOSが用意されている
VPSでは1台の物理的なサーバーの中に、仮想的に複数のサーバーを構築します。共用サーバーと異なり、ホストOSの土台の上にユーザーごとにゲストOSが用意されており、基本的にこのゲストOS同士は干渉することはありません。そのため、共用サーバーのように、他のユーザーの利用の影響によって障害などが発生したり動作が重くなってしまったりということは基本的にはありません。
メモリやCPUについても、共用サーバーと違ってそのゲストOS用の性能が確保されるため、共用サーバーより負荷のかかる利用にも適しています。また、1つのOSを共有する共用サーバーと異なりゲストOS上では自由にソフトウェアなどの運用ができるのも特徴です。
専用サーバーとVPSの違い
専用サーバーは物理的なサーバーを1台まるごと利用できるサービスです。一方のVPSは、仮想的に専用サーバーを利用するといっても、物理サーバーを専有しているわけではありません。そのため、性能や負荷に対する耐性は専用サーバーの方が高くなります。また、仮にその物理サーバーに障害が発生した場合、そのサーバーを利用しているVPSユーザー全てが影響を受けることになります。
回線に関してもVPSでは複数人で共用する形になり、他ユーザーの利用状況によってはレスポンスが悪くなることもありえますが、専用サーバーなら回線も個別に利用できる場合があります。
その代わりVPSは専用サーバーと比較してはるかに料金が安くなります。
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クラウドとの違い
クラウドはCPUやメモリ、ソフトウェアをインターネットを通じて利用できるサービス形態全般のことを指しています。そのクラウドサービスはIaaS/PaaS/SaaSの3種類に分類されますが、中でもIaaSがVPSの比較対象にさることが多いです。
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VPSとクラウド、特にIaaSの間には仮想化技術を用いている点やCPUやメモリ、ソフトウェアをインターネットを通じて利用している点など共通点があります。
しかし、そんな両者の間にも「自由度」と「費用感」の2項目については明確な違いがあります。
まず自由度に関してですが、VPSの場合は契約プランによって利用できるCPUやメモリが固定されています。もちろんプラン変更を行うことでこれらのスペックを上げられますが、クラウドのように複数台のサーバーを自由に構築することができ、その中で自由にリソースを使用できる自由度の高さには及びません。
その反面、費用感ではVPSに軍配が上がります。VPSは上記の通りプランでCPUやメモリが固定される代わりに、比較的安価に利用できるという特徴があり、法人だけではなく個人であっても気軽に契約することが可能です。しかし、クラウドとなると自由度の高いシステム構築が可能ではありますが高額になることがほとんどです。
こういった違いからスタートアップ企業のサービスやシステム基盤にはクラウドが向いていますが
VPS・レンタルサーバー・クラウドのメリット・デメリットまとめ
ここではVPS、レンタルサーバー(共用・専用サーバー)、クラウドのメリット及びデメリットをまとめて一覧化します。今までの解説をもとにこの表をみれば三者の違いが把握しやすいでしょう。
価格・スペック比較表
VPS | 共用サーバー | 専用サーバー | クラウド | |
---|---|---|---|---|
root権限有無 | あり | |||
参考価格 | 数千円~数万円程度 | |||
自由度 | ||||
OS選択 | ||||
保守 | ユーザー | |||
構築 | ユーザー | |||
スペック | ||||
外部影響 | ほとんど受けない ※回線を共有する場合のみ | ほとんど受けない | ||
独自アプリ | ||||
OSカスタム | ||||
ハードウェアカスタム |
VPSのメリット・デメリット
次に、VPSのメリット・デメリットを箇条書きにしてまとめます。
メリット
- 専用サーバーのようなスペックを安価な価格で利用できる
- 共用サーバーに比べて自由度が高い
- あらかじめ用意された中からOSを選択できる
デメリット
- サーバーの設定や運用は全て契約者が行う必要がある
※物理サーバーの部分はレンタルサーバー業者にて管理されます。
- 物理的・ネットワーク的及び利用OSなどに専用サーバー程の性能や自由度はない
共用サーバーよりVPSをおすすめするシーンの例
ここでは、具体的な事例をあげて共用サーバーと比べVPSの利用が適しているシーンをご紹介します。具体例を参考にしていただくことで、より明確に両者の違いが把握できるでしょう。
独自アプリを利用したい
自由度の低い共用サーバーでは、利用できるプログラムやアプリが制限されます。たとえば、専有できるクラウドストレージ(Nextcloud など)、ビジネスチャットツール(Rocket.Chat など)、プロジェクト管理ツール(Redmine など)を利用したい場合は、サーバー環境を自由に設定できるVPSの方が適しているでしょう。
マルチプレイ用のゲームサーバーを利用したい
MINECRAFTなどのオンラインゲームでは、複数のプレイヤーが一緒に遊ぶマルチプレイ機能があります。専用のマルチプレイ環境としてサーバーを用意する場合、 自宅のPC でサーバーを立てるよりもVPSを利用した方が気軽に始めることができます。VPSのサービスによってはワンクリックで簡単にマルチプレイサーバーを立ち上げられる機能が用意されているケースもあります。
仮想OSを利用したい
VPSを利用すれば、上述の通りユーザーごとに仮想的なゲストOSが提供されます。これによって、ユーザーはOSレベルで高度な設定を行うことができます。また、ゲストOSの上で動作するアプリケーションの設定についても独自性の高いより詳細な設定を行うことができます。運用に合ったOSを選択することもできます。
Windows アプリを起動させたままにして利用したい
VPSのOSにWindows Serverを選択すれば、24時間稼働のWindows環境を利用できるようになります。Windowsで動作するゲームやFX自動売買ツール(MT4 など)を24時間365日稼働させたい場合、自宅のPCだと電気代などが気になりますが、VPSなら常時安定したサーバー環境を簡単に用意できます。また、Windowsのリモートデスクトップとして利用できるので、自分用のリモートワーク環境を構築することもできます。
Ruby や Javaを使いたい
Ruby や JavaScript は様々なアプリケーションを開発する際に使われる人気の高いプログラミング言語ですが、ほとんどの共用サーバーでは、サーバー側で処理が必要となるRuby on RailsやJavaサーブレット (Java Servlet)、Java Server Pages (JSP)などの利用を許容していません。そのため、これらのプログラム言語で作成されたアプリケーションを利用する場合には、共用サーバーではなくVPSが適しています。
大手クラウドサービスではコストが合わない
クラウドサービスとは、VPSを進化させたサービスです。仮想的な専用サーバーを利用できる点はVPSと同じですが、スペックが足りなくなった場合などに柔軟にスペック追加などができます。
しかし、そのような仕組みがある分、同じスペックのVPSよりも料金が高くなる傾向があります。またクラウドサービスによっては、ネットワークの転送量によって従量制の利用金を課すサービスもあります。共用サーバーでは実現できない自由度の高い設定を必要とする一方で、クラウドサービス程の柔軟性は必要なくかつコストが限られているといった場合には、クラウドサービスではなく、コストの低いVPSの方が適しているでしょう。
カゴヤのサーバー研究室ではオンラインゲームやクラウドストレージ、チャット、リモートデスクトップ、FX自動売買ツールなど、VPSの活用方法や気になるセキュリティ設定などを初心者にもわかりやすく解説しています。
VPSの選び方
VPSを選ぶときは以下のポイントをチェックしましょう。
- 性能と価格のコストパフォーマンス
- 契約期間や料金体系
- サポート体制
性能と価格のコストパフォーマンス
VPSを調べてみると各社ともスペックが異なる5種類~10種類ほどプランがあり、どのプランがよいのか悩んでしまいます。CPUのコア数やメモリー容量、ストレージ容量といったスペックに応じてプランが分かれています。数字が大きい方がスペックが高いプランとなりますが、その分利用料金も高くなりますので、自分の用途にあったスペックを選択する必要があります。
もし利用したいアプリケーションが決まって入れば、そのアプリケーションの推奨スペックを調べてみましょう。
例えばゲームアプリであれば提供元のサイトにサーバーを立てる場合に必要となるCPUのコア数、メモリー容量、ストレージ容量が記載されています。そうした推奨スペックを満たすプランを選びましょう。もしスペックで迷うようであれば、業者によっては利用開始後に簡単にプラン変更できるVPSがありますので、そうした業者を選択しておくとよいでしょう。
複数の業者を比較するときは、同じCPUコア数で、メモリー1GBあたりの単価がいくらか計算して比較すると、条件をそろえてコストパフォーマンスを比較できます。
契約期間や料金体系
料金表に記載されている価格を比較するだけでは十分ではありません。業者によって料金体系が異なるので、次のことに注意しましょう。
- 初期費用はかかるのか
- 契約期間の縛りがないか(短期間の利用だと表示価格より割高になる場合があります)
- 時間課金や日額課金で短期間の利用が可能か
自分がVPSを使いたい期間で、もっともコストメリットがあるVPSを選択しましょう。
サポート体制
VPSはサーバーの管理を自分自身で行う必要があります。とはいえ、自分では解決できない問題が発生したり、
万一障害が発生した際に、相談できるサポート窓口があると安心です。
メールやチャットのサポートしかないと緊急時の対応が遅れる可能性もあるので、電話サポートなど緊急時のサポ―ト体制もチェックしておきましょう。
これらのポイントを踏まえてコストを比較し、自分にあったVPSを選択しましょう。
まとめ
いかがでしょうか。この記事でご覧いただきましたように、VPSはさまざまなシーンでおすすめできるサービスとなっています。VPSの特長を把握しメリット・デメリットをおさえた上でサービス選択をすれば、ご自身の運用にあったサービスが探しやすくなるでしょう。
開発・検証・プログラミング学習に。無駄なコストもかけたくないあなたにおすすめのVPS
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