レンタルサーバーは利用者や用途により、選択する基準は異なります。こちらの記事では主に法人での活用を想定し、優先して検討すべき項目をまとめています。サーバーの利用方法にはWebサイトの公開のみの場合もあれば、商売や自組織での管理業務用もあります。これらの高度で専門的な技術を安心して任せることができ、いかに代行してくれるかをよく注意して見比べましょう。自組織にとって本来の仕事に集中することができ、同時に時間と費用の削減につながるからです。
目次
法人向けレンタルサーバーとは
求める機能や性能に合うように、業務での利用に向いているプランが数多く提供されています。この記事では「共用サーバー」、「専用サーバー」そして「VPS(仮想専用サーバー)」の3つに絞って解説しています。これら以外にも、より高機能で専門的な用途に向いている「クラウドサーバー」などもあります。多くの場合、操作が難しく利用料金が高くなりがちなのが難点です。
法人向けと個人向けの明確な違いは信頼性に尽きます。具体的には、法人での用途では以下の要求がより厳しいと考えています。
- 安定的に継続した利用ができるか
- 情報セキュリティ全般が対策済みで、安心してサーバーの管理全般を任せられるか
- サポート体制は十分か
- 必要な機能や性能が充実しているか
- 負担にならず納得できる料金体系か
法人向けレンタルサーバーは、料金が安ければ何でも良いという訳ではありません。個人向けとは明らかに優先順位が異なります。
法人向けレンタルサーバーの種類
「共用サーバー」、「専用サーバー」、「VPS(仮想専用サーバー)」の3つを比較し、まずは特徴を整理しています。これらのうち、どれが法人向けかという単純な比較ではありません。事業の目的を達成するために、どの種類を選択すればより有利かが肝要と考えます。
レンタルサーバーの概要について、カゴヤのサーバー研究室では以下の記事でまとめています。
【図解】レンタルサーバーとは?仕組みと種類、選び方を初心者にもわかりやすく解説します
レンタルサーバーとはその名の通りサーバーを貸し出すサービスのことです。この記事では、ホームページを公開する際に必要なレンタルサーバーの仕組みや種類、選び方、さらに、契約の際に検討が必要な独自ドメインに関する注意点まで解説しています。
レンタルサーバーの種類と向いている用途
共用サーバー | 専用サーバー | VPS (仮想専用サーバー) | |
---|---|---|---|
概要 | 複数の利用者で1台のサーバーを共用する | 1台のサーバーを単独で利用する | 複数の利用者で1台のサーバーを共用するが、利用者毎にあたかも1台のサーバーのように区分けしている |
安定性 | 運用と非常時の対応は、ある程度業者に任せることができるため高い | 維持するためには専用サービスを利用することが現実的(マネージドサービスなど) (注) | 維持できるかは、自組織の専任者の技能と余力に度依存する |
情報セキュリティ対策 | プランに基本的な機能が備わっている(オプションサービスで強化可能) | 困難(まず自組織の方針を決め、必要な手法を導入し維持する) | 自組織の専任者の技能と余力にある程度依存する |
サポート体制 | 公式サイトのヘルプページやメール以外に電話などの手段があり、困ったときに回答あり | 契約やオプションサービスにより、緊急時の対応まで対応あり | レンタルサーバー会社の基本的なサポートとともに、自組織で自力の判断や対応が必要 |
始めやすさ | データが揃っていれば最短で始められる | 計画とその実施に、時間と手間がかかる | 計画とその実施に、時間と手間がかかる |
基本的な機能や性能 | レンタルサーバー会社が選定したもので一通り揃う(オプションサービスで強化可能) | 利用目的にあわせ、自組織で必要な手段と程度を選択して導入できる | 利用目的にあわせ、自組織で必要な手段と程度を選択して導入できる |
料金体系 | 機能により、低価格帯から高価格帯のプランまで選ぶことができる | 高い(サーバー機器だけでなく管理費用も発生する) | 専用サーバーより安価だが、自組織の専任者の人件費を考慮する必要がある |
向いている用途 (法人での利用の場合) | 自組織のWebサイトを広報目的に公開し、自組織で更新作業をする | ・顧客に独自サービスを提供し売上増加を目指す ・自組織の従業員向けに、業務効率向上を目的としたサービスを提供する | ・比較的規模が小さいサービスの利用(商売や自組織の管理業務) ・自組織に専任者が常駐し運用管理ができる ・費用を抑えつつ高度で自由にサーバーを利用する |
(注)マネージドサービスとは
「専用サーバー」を効率良く運用するために、自組織でできない作業を専門家に代行してもらうサービスです。導入計画から日々の運用や緊急時の対応まで、専門的で広範囲の業務を任せることができます。
カゴヤのサーバー研究室では、こちらの「マネージドサービス」について以下の記事で詳しく解説しています。
利用者に代わり、サーバーなどを管理する業務が「マネージドサービス」です。サービスの提供者により内容は少しずつ異なるため、まずは考え方から理解しましょう。利用者は状況に合わせて適切に活用することで、管理コストや作業時間を大幅に節約可能です。従来からある意味に加え、近年広がっている「クラウド」との関連も整理しています。 マネージドサービスとは? ことわざ「餅(もち)は餅屋」のように、何でも自分一人でや…
ご参考までに「マネージドサービス」の一例として、カゴヤ・ジャパンでは以下のサービスプランを提供しています。
法人向けレンタルサーバーの選択時に検討すべき項目
前章の比較をもとに、本章では確認すべき項目について具体的に説明しています。
安定的かつ継続的に利用ができるか
利用者には当然のことですが、その維持と改善をレンタルサーバー会社としてどのように実践しているかを確認しましょう。自組織で提供しているサービスが突然停止してから、慌てて文句を言っても遅すぎます。失った時間や収益、そして何より顧客の信用は戻ってこないからです。
【検討項目1】 品質保証制度(SLA)
あくまで一つの目安ですが「品質保証制度(SLA)」の数値で、サーバーの稼働率の高い業者を選択する方法をおすすめします。全ての業者が公開している訳ではありません。公開している企業では、その数値はほぼ100%で、多くの場合99%以上です。一例では、カゴヤ・ジャパンの場合「サーバーの月間稼働率が99.95%未満」です。(KAGOYA FLEX 利用規約 別記1)
【検討項目2】 リスクマネジメントの実施状況
レンタルサーバー会社として上記の品質保証を維持するためにも、どのようなリスクマネジメントをしているかを調べることも有効と考えます。
カゴヤのサーバー研究室では、以下の記事でリスクマネジメントの概要と解決手段の事例を紹介しています。
情報システムのリスクマネジメントとは?対策事例をご紹介します
なぜ情報システムの「リスク」を、「マネジメント」しなければならないのでしょうか。この「リスク」の範囲は広く、誰も免れることはできません。だからこそバランス良く効率的で負担の少ない方法を、着実に実施し続ける「マネジメント」が必要です。綿密な調査だけでなく、解決する目標を自ら決めて実行することが何よりも大切です。想定する「リスク」によりどのような解消事例があるのか、あわせてご紹介します。 情報システム…
情報セキュリティ全般の対策済みで、安心してサーバーの管理全般を任せられるか
レンタルサーバー各社はそのWebサイト上に情報セキュリティの基本方針を掲載し、公開しています。もちろんこちらの方針内容は重要です。ただそれ以上に本質的なことは、レンタルサーバー会社が基本方針を確実に実行しているかについてです。その利用者の利害に直結するからです。
情報セキュリティマネジメントシステムを実践しているか
多くの判断材料のうち、第三者がチェックする制度に合格(適合)しているかを確認するのが、比較的わかりやすいと思います。例えば、ISMS(情報セキュリティマネジメントシステム)やプライバシーマーク(個人情報保護の対策)のロゴマークが、レンタルサーバー会社のWebサイトに掲載されているかを探します。有効と考える理由は以下の3つです。
- 審査の試験問題に答えて合否が判断されるのではなく、情報セキュリティの対策を、レンタルサーバー会社の従業員が実際に実行できているかの点検を行っている(ルールなどの書類審査もあり)
- 1回合格すれば良い試験ではなく、その後も継続して審査を受け合格していかなければならない
- 組織内でルールをつくり実行し記録を残して、それらをもとに改善する一連の流れがある
データセンターの管理状況はどうなっているか
レンタルサーバー会社には、膨大な数のサーバー機器や関連機器、回線が特定の場所に集中して設置されています。データセンターと呼ばれる大規模施設は、情報セキュリティ対策の代表的な管理対象の一つです。
なお全てのレンタルサーバー会社が独自のデータセンターを保有し、管理しているとは限りません。他社のデータセンターにあるサーバーを使い、他社にはないサービスとノウハウを付加しプランを提供しているレンタルサーバー会社もあります。自らデータセンターを保有する運営者の方が、物理的に情報セキュリティの維持や向上への動きがより活発にならざるをえず、利用者にとってはむしろ好ましいのではないでしょうか。
カゴヤ・ジャパンでは、データセンターについて専用ページで情報を公開しています。またカゴヤのサーバー研究室では、データセンターの概要について以下の記事などで詳しく解説しています。
オンプレミスからクラウドへ移行する際に、多くの場合データセンターが利用されています。その目的を理解することが、利用者にとって最適な選択につながると考えます。この記事では、円滑な選定のために必要なポイントをまとめています。「信頼性」が感じられるか厳しく比較検討し、後悔しないようにすることが重要です。 データセンターとは データだけが集中している場所ではありません。またサーバー機器だけが大量に並んでい…
サポート体制は十分か
自組織にとって収益になる独特なサービスの提供でも、従業員が業務を円滑に進めるためにも、サーバーなどの安定した稼働が前提になります。そのためにサーバーなどのさまざまな機器を準備し、無理なく運用と管理し続けていかなくてはなりません。この項目では法人向けレンタルサーバーの選択時に検討すべき内容を、以下の2点について解説しています。
基本的なサポート体制
サーバー利用時にトラブルなどで困ったときは、可能な限り早く解決して安心したいものです。公式サイトやインターネット上の一般的な情報調べれば、解消することもあるでしょう。それでも自組織内で解消する方法が見つからない場合は、レンタルサーバー会社のサポートが頼りになります。自組織で対応ができない状況には以下を想定しています。
- やり方はわかるが作業する時間がない
- 修復する方法自体がわからない
- 自組織以外に原因がある(と判断できる)
特に複数の原因が同時に影響しているときは、慣れていない人が対応すると時間を無駄に費やし、思うような結果を残すことが難しい場合があります。そのようなときは無理をせず、まずは専門家に解消方法を教えてもらうのが近道です。
以下のように、サポートの手段を複数用意して対応をするレンタルサーバー会社が多くなっています。
- 公式サイト上での情報提供(マニュアルやヘルプページなど)
- メールやチャット(返信が必要な場合)
- 電話などの音声通話
- ビデオ通話
- 画面共有や遠隔操作など(有償サービスの場合あり)
また、これらのサポートの対応時間もチェックしましょう。夜間や休日など利用者の休みとは関係なく、トラブルは発生するものです。平日の昼間だけの対応では不安が残ります。
マネージドサービス(専用サーバー向けオプションサービス)
特に法人向けレンタルサーバーを利用する際には、障害発生後の対応を決めておくことが経営者の役割と考えます。膨大な被害を防ぐために、事前に予算を計上する必要があるからです。サーバーなどの利用料金以上に、それらの仕組み全体を安定的に稼働し続けていくための費用です。
いろいろなプランがあるなかで、主に専用サーバー向けに「マネージドサービス」という高度な管理技術を委託する方法があります。コストをかけこちらのサービスを使うことで、利用者は本業の営業活動や、事業を考える時間を確保することができるようになります。
自組織にとって負担にならず納得できる料金体系か
組織や事業により適正なコストは異なるため、予算化だけとっても難しい作業です。そのため時間の許す限り、専門家に相談したり、複数のレンタルサーバー会社から見積りをとり比較するなどして、少しでも客観的に検討するのが望ましいと考えます。
注意点として、コストの数字だけを比較し高低だけで決めてしまうと、後で後悔することが多くなりがちです。誰が実際に作業をするかにより、数字には計上されない人件費が発生するからです。例えばレンタルサーバー会社の見積金額が高いため、自組織の担当者に作業を割り当てることがあります。その場合、担当者の作業が人件費として発生したり、作業が正しく出来ずやり直す場合があると盲点になります。
(番外編)引っ越ししやすいところにする
ひとつのレンタルサーバー会社に決めたら、絶対に変えてはならないというルールはありません。以下のような事情で変えたいこともあるでしょう。
- 安定していない
- 情報セキュリティが不安
- サポートが良くない(反応や返信内容など)
- コストとサービス内容のバランスに納得できない
- なんとなくそりが合わない
万一上記の不満がある場合には、たとえ面倒でも遅かれ早かれ他のサーバー会社に移転手続きを進めなければなりません。そのような場合、柔軟に対応してくれそうなレンタルサーバー会社かどうかを確認することも大切と考えます。
移転手続きや作業は一瞬にして終わるものではありません。想像以上に多くの機器やその設定、プログラムなどを計画的に引っ越しする必要があるからです。また移転作業の専門家に依頼すれば作業は可能ですが、準備期間と費用がかかり、自組織内の本来関係のない従業員にまで影響が及ぶことがあります。
【資料編】レンタルサーバーを読み解くための専門用語
法人向けレンタルサーバーを比較検討する際に、概要の理解が欠かせません。専門用語の意味をある程度は把握することをおすすめします。ここまでも都度用語は解説してきましたが、さらに以下を補足しています。非常に多く、常に進化しているため、まずは主要な用語から少しずつ理解していきましょう。
基本的な技術用語(サーバーのプログラム関連)
概要 | 詳細情報 (カゴヤのサーバー研究室) | |
---|---|---|
サーバー | 各種のサーバー用プログラムを動かすための機器 | サバ管への道!VPS道場~第1回 サーバー とは何のこと?種類は?~ https://www.kagoya.jp/howto/cloud/webserver/vpsdojo_bootcamp_01/ |
ドメイン | ・固有の住所に相当し、Webサイトやメールアドレスに使用される ・設定により1つのサーバーで複数のドメインが使用可能 | 【図解】ドメインとは?をわかりやすく解説します https://www.kagoya.jp/howto/it-glossary/domain/web-01/ FQDNとは?ドメイン名・ホスト名・IPアドレスとの違い https://www.kagoya.jp/howto/it-glossary/domain/fqdn/ |
Webサーバー | Webサイトの公開や管理をするプログラム | Apacheとは?Webサーバーの仕組みと人気サーバーソフトを徹底解説 https://www.kagoya.jp/howto/it-glossary/web/apache/ |
メールサーバー | メールの送受信や管理をするプログラム | メールサーバーとは?仕組み・役割をわかりやすく解説します https://www.kagoya.jp/howto/it-glossary/mail/mailserver/ |
ネームサーバー | ドメイン名とサーバーのIPアドレスを結びつける | 【図解】DNSサーバーとは?設定・変更と確認方法 https://www.kagoya.jp/howto/it-glossary/domain/dns-server/ IPアドレスとは?をわかりやすく解説します https://www.kagoya.jp/howto/it-glossary/network/ipaddress/ |
性能(スペック)に関する用語(サーバーの部品関連)
概要 | 選択のヒント | |
---|---|---|
CPU | データを処理する最も中心的な部品 | 種類は「Xeon」でコア数は大きいほど良い |
メモリー | ・データを一時的に保管する部品 ・有償で容量を追加可能 | 専用サーバーでは16GB以上あれば安定する |
ストレージ | ・データを記憶する部品で、HDDやSSDがある ・有償で容量を追加可能 | ・料金が高いがより高速なSSDを選択する方が無難 ・利用目的により大容量のストレージが必要(最低でも1TB以上) |
バックアップ | サーバーが故障しても、データが消失せず復旧が円滑にできる仕組み | 「RAID」などの専用の仕組みを導入しているか(RAIDには目的により複数の種類あり) |
(事例)カゴヤ・ジャパンのマネージド専用サーバーの場合
以下のページの項目「サービス仕様」でプラン毎に比較しています。サーバー関連にも非常に多くの用語があります。
セキュリティ対策関連
概要 | 選択のヒント | |
---|---|---|
ISMS | 情報セキュリティを維持や向上のため、組織のマネジメントとして取り組む仕組み | ISMS(情報セキュリティマネジメントシステム)とは https://isms.jp/isms/ |
不正侵入対策 | 外部からの攻撃を防御し、自組織の金銭や重要な情報を守る | 情報システムのリスクマネジメントとは?対策事例をご紹介します https://www.kagoya.jp/howto/engineer/infosecurity/risk-management/ |
SSL | ・データ暗号化の仕組みで、Webサイトの安全を確保する ・無償のものが広く使われている(Let’s Encryptなど) ・大規模な事業向けには有償のものを利用することが多い | 【図解】SSL/TLSとは何か?その違いや仕組み・導入方法についてわかりやすく解説します https://www.kagoya.jp/howto/it-glossary/security/ssl/ 【わかりやすい】 常時 SSL 化とは?未導入の問題点、有料のSSL証明書選択と導入方法 https://www.kagoya.jp/howto/rentalserver/webtrend/aossl/ |
まとめ
法人向けにレンタルサーバーを選択する際は、慎重すぎるくらいでちょうどいいと考えます。専門的で重要な業務について代行を依頼するためです。たとえ時間がかかっても、あとで後悔しないよう納得のいくまで、レンタルサーバー会社に確認することが大切です。事業を安定して継続し、自組織を存続するためにもぜひご検討ください。
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